
日づけ:2025年5月28日

みなさん、こんにちは!
「現場日和」担当スタッフです。
昭和初期を舞台に描かれている今作は、俳優陣が着用している衣裳をはじめ、身につけている装具やヘアメークなども注目ポイントです。その中で今回は代表して、このドラマの衣裳を担当している酒見紗佳さんへのインタビューをお届けします。

数々のドラマや映画の衣裳を手がける老舗「東京衣裳」に所属している方で、本作の時代設定に合わせた衣裳を提案する、“時代を超えるスタイリスト”です。
そんな酒見さんが、なつ美(芳根京子さん)や瀧昌(本田響矢さん)の衣裳を選ぶときにこだわったポイントとは……?
じっくりとお話を聞きました!

原作を読んだときの印象を教えてください。
「まず、なつ美の着物に目が留まりました。この作品の舞台になっている昭和初期の服って和洋関係なく大きめの柄や原色が多くて、ドラマで芙美子さん(山本舞香さん)が着ているようなパキッとした色使いのものが主流なんです。ですが、原作コミックスでは、なつ美は淡い色の着物を着ている表紙が多かったので、『なつ美に関しては、時代よりもキャラクターイメージに合わせた服を選んでいるのかな』と感じました。なので、今回のドラマで衣裳を選ぶ際も、時代を考慮しつつ暖色系で淡い色の衣裳を多めにしています。」
確かに、淡いピンクやイエロー系の着物を着ているイメージです。
「なつ美の心情とさり気なくリンクさせているので、嬉しいときや楽しいときは少しトーンを上げますし、沈んでいるときは少し暗めにすることもあります。また、なつ美と瀧昌がはじめて顔を合わせるシーン(第1話)で、なつ美が着ていたピンクの着物は、原作で着ていたものにできる限り寄せました。昭和初期に着られる着物は、柄も色もかなり限られるうえに季節によって着られない柄や生地まであるので、本当に大変です(笑)。」

素敵なこだわりです。第2話の新婚旅行に着ていったワンピースも、原作の再現度が高いですよね。コミックス2巻の表紙で着ている服そのものでした。
「あのワンピースは、原作をもとにデザイン画を起こして、作ってもらいました。瀧昌がスカート丈を気にしたり、風になびく裾に戸惑ったりするので、芳根さんが着たときちょうどいい丈にならないといけませんし、いい感じになびく生地でないといけませんから、なおさら作ったほうがいいなと考えていました。」

では、瀧昌が着ている軍服はいかがですか?
「場合によっては、当時のものを着ていただくこともあるのですが、今回は本田さんの体型に合わせて作ったほうが良いかなと思い、いちから作りました。実は、当時は軍服を個々にテーラーで仕立ててもらっていたらしくて、型紙が今も結構残っているんです。なので、それをもとに作っています。加えて、肩パッドなどを入れて当時のガッシリとした海軍士官を再現しました。本田さんはスタイルがいいので、それだけで凛々しさが増して驚きました。」
現代劇と比べて、かなり手間がかかっていそうですね。
「そうですね。現代を舞台にした作品だと、現存するものを用意することが多いと思いますが、昭和初期の場合、その時代に作られた服でないと違和感が出てしまうので、いつ作られたものなのか見極める必要がありました。特に着物は、時代によってモチーフの描き方が変わっていて、桜ひとつとっても全然違うんです。文献を参考にしながら選んでいくのも大変でした。」

なかでも特に大変だった衣裳は?
「ポスタービジュアルで瀧昌が着ている正装(オープニングタイトルの最後でも着用)です。実は、装飾などが付いていないベースの衣裳は、上下ともに当時のものが残っていて、偶然にも本田さんのサイズにぴったりだったんです。なので、そこにボタンや肩章や襟章などを付けて仕上げていくんですけど、このパーツ類がなかなか見つからなくて…。襟章は、肩章と一緒に実際に使われていたものをなんとか探し出して、完成させました。ボタンを付ける位置にも細かな指定があって、神経を使いました。ポスターでも使われるということで、最初に用意するべき衣裳の難易度が一番高かったです(笑)。」

瀧昌といえば、なつ美との散歩のシーンで開襟シャツを着ていたのも印象的。酒見さんによると、「軍服は首周りが詰まっているので、私服は襟元を開けたいなと思ったんです」とのこと。また、半袖&サスペンダーという一見するとかわいくなりがちなコーディネートも、アースカラーや長めの半袖を選び、落ち着いた雰囲気に。劇中では、違和感なく着こなしていましたね。
瀧昌への思いが増して……
なつ美の心情の変化とともに
服にも変化が
今後の放送話で、楽しみにしていてほしい衣裳を教えてください。
「今後は、なつ美の洋服が増えます。月日を重ねるなかで、郁子さん(和久井映見さん)と服を買う機会も増えたと思いますし、瀧昌の好みをぼんやり意識する瞬間もあると思うので、“なつ美のセンスで選んだ、瀧昌が好きそうなワンピース”も着るかもな、と。そのときは、色のトーンも上げるつもりなので、きっと雰囲気が変わると思いますよ。」

淡い色を好んで着ていたなつ美に、変化が見えてくるのですね。
「先ほど『暖色系で淡い色の着物を着ている』といいましたが、今後は青系を増やしています。“海”のイメージですね。いつ帰ってくるかわからない瀧昌を心配する描写がよく見られるので、意識的ではないにしても瀧昌を思った結果、青系を選ぶこともあるんじゃないかなと思うんですよね。台本を読んで、そのときのなつ美の心情を読み解いて、一つひとつ選んでいます。」
また、第6話ではついに私服姿の深見(小関裕太さん)が登場するとか!先行で公開されていたスリーピーススーツは、あえて揃いにせずベストだけ外しているのはおしゃれポイント。ポケットに手を入れ、芙美子とともに歩く姿はさすが色男ですね。
よく見ると……芙美子のスカートと深見のネクタイが赤色を取り入れたコーディネートになっているようで…。お洒落なふたりのシーンにもご期待ください!

次回の「現場日和」では、フードコーディネーターの方による制作秘話を予定しています。
お楽しみに!