波うららかに、めおと日和

2025年4月24日スタート 毎週木曜 よる10時放送

現場日和

細部までこだわった、なつ美たちの家

日づけ:2025年5月21日

みなさん、こんにちは!
「現場日和」担当スタッフです。

今回は、このドラマの美術デザインを手掛けた宮川卓也氏へのインタビューをお届けします。

これまで数々のドラマや映画などの美術デザインを担当してきた宮川氏は、今作でなつ美(芳根京子さん)と瀧昌(本田響矢さん)が暮らす家や、なつ美の実家である関谷家、海軍艦艇にある「ガンルーム」などのセットの設計デザインを手掛けています。

セットを通し、今作の時代背景や世界観に説得力を与える“空間演出のプロ”です。

江端家セット

では、一体どんなところにこだわってデザインをしたのでしょうか?
宮川氏のお仕事に迫りました!

今作は昭和11年を舞台にしていますが、この時代を美術デザインに落とし込むにあたり、苦労したところはありますか?

「まず、当時の資料を集めたり博物館に行ったりして、知識を得るところから始めるのですが、昭和11年は、戦後復興期に比べると資料が少ないんです。むしろ、もう少し前の時代のほうが残っているくらい。なので、資料集めに関しては苦労したといえるのかもしれません。ただ、昭和11年より前にあったものは、昭和11年に使っていてもおかしくないので、それを念頭に置きながら、現代の人が見ても違和感のない住居を作っていきました。“歴史に忠実に”という部分は、原作を読んで感じた原作者・西香先生の意思だと思いましたので、僕もできる限り忠実にしたいと思いました。」

関谷家台所

なかでも、こだわったところはどこですか?

「台所です。演出の平野監督は“工程”を撮るのがお好きで、例えばお米を炊くシーンにしても、使っている釜や火のつけかたといった一連を丁寧に撮りたいだろうなと思ったんです。なので、台所はなつ美と瀧昌の家も関谷家も土間にして、広めにとっています。
また関谷家は、なつ美たちが住んでいる家よりも田舎にある設定なので、より広く古い作りにしていて、家族みんなで囲炉裏を囲んでごはんを食べられる間も作りました。『この温かい家庭でなつ美は育ちました』という、背景を見せたかったんですよね。」

江端家台所・窓

セットでありながら温かさを感じられるのが、今作の美術の特徴だと思います。そのニュアンスは、どんなふうに出しているのでしょうか?

「和の空間はもともと温かさが出やすいんですが、そこに“懐かしさ”を加えることでより温かみが増すんです。わかりやすいところで言うと、窓の汚しですかね。厳密に言うと、昭和11年当時はピカピカだったのかもしれませんが、現代人が思い浮かべる昔の家って大体年季が入っていますよね。なので、あまりにも新品っぽくしてしまうと、観る方にとって逆に違和感になってしまうのではと思いました。そこで、違和感が生まれないよう、年季を入れる工夫をしました。窓の汚しはかなり強めに入れています。」

原作裏設定

ちなみに、原作コミックスの第1巻の幕間(第4話からの第5話の間のページ) にはなつ美と瀧昌の家の配置図 が描かれており、「すごく参考になりました」と話す宮川氏。
そのページには「(なつ美たちの家は)蔵を潰して造りました」という文言も。
宮川氏はここから「蔵から改装すると、今のような縁側や窓は作れないんです。実際はどうなんでしょう?」と気になっている様子。

そこで、西香先生に聞いてみると……どうやら蔵を完全に潰して離れを建て直したという設定のよう。「郁子さん(和久井映見さん)自身に、親族の縁で海軍の士官との結婚が決まったという経緯があるので、そんな郁子さんなら、士官夫婦を離れに住まわせたりしそうだなと思い、今の形になりました。離れなのにお風呂もトイレもあって、水道やガスまで引いてあるのは、若い士官夫婦に苦労させたくないという郁子さんの思いやりです」とのこと。

転勤の多い海軍士官の夫婦は、小さな借家を転々としたりするのがお決まりだったのだとか。そういった時代背景も踏まえて、離れに住む設定が生まれたんですね!

江端家セット

続けて、「ガンルーム」のこだわりや5話以降の注目ポイントも。

瀧昌や深見(小関裕太さん)が休憩している、海軍の「ガンルーム」のこだわりを教えてください。

ガンルーム

「こちらも、まず知識を得るために実際の戦艦を見に行きました。あとは、映画の中にも忠実に再現している作品があるので参考にさせてもらいつつ、今回のドラマに合わせて脚色しています。」

ドラマに合わせて、というと?

「芝居をやりやすいように、ですね。『この画角で撮るなら、ここにカメラを置けるといいな』『この画角で撮るとき、後ろに丸窓が入ると戦艦内だとわかりやすいな』といった感じで、位置関係を整えました。瀧昌と深見が会話している後ろに、丸窓から2本の光が差し込んでいたりしたら、無機質なガンルームにも奥行きが出せるんですよ。」

また、こちらも歴史に忠実にするのは難しかったのではないかな、と。

「そうですね。実際に見に行った戦艦も、昭和11年より遥かに古いものだったり、戦中のものだったりするので。その間くらいの年代のものを、限られた時間の中で形にするのは大変でした。」

今後の注目していただきたい
セットは「喫茶店」!

喫茶店

これから登場してくるセットで注目してもらいたいポイントを教えてください。

「それでいうと、喫茶店ですね。他の建物に関してもそうですが、原作の漫画では間取り図などをガッチリ決めているものって基本ないので、ドラマ化にあたって設定から起こしています。この喫茶店もそんなセットのひとつ。とはいえ、原作で描かれていた喫茶店の雰囲気やテイストは残すように意識したので、原作も読んでいる方はぜひ注目してみてほしいです。」

「現場日和」担当スタッフは、この取材後に喫茶店のセットにも潜入しました!

小関裕太さん

レトロモダンな店内は、今にもコーヒーのいい香りが漂ってきそう。
壁に貼られたメニュー表や棚に飾られた置物など、どこを見ても細部まで凝っていて、近所にこんな喫茶店があったら、常連になってしまいそうなほど、落ち着く空間が広がっていました。
さらに目に留まったのは、天井から吊られた“トンボ模様”の照明。
思い返してみると、第3話でなつ美が瀧昌に贈ったカフスボタンもトンボでしたよね。武運長久の願いが込められた“勝ち虫”は、もしかしたらほかにも隠れているのかもしれません……!?

喫茶店のシーンは第6話で描かれているので、楽しみにしていてくださいね。

次回の「現場日和」では、衣裳の制作秘話をお届けします!

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