ずっと逢いたかった。
-ストーリー-

その夜、自宅のリビングで灯りもつけずに一人グラスを傾けていた村川は、ふと十年前の家族旅行の記念写真に目を移す。そこには家族がまだ家族らしかった頃のぬくもりがあった。その写真を撮った時に、海で幸樹が見つけたガラスの小瓶のことをふいに思い出した村川は、棚の奥にしまいこんであったダンボール箱からその小瓶を探し出した。小瓶の中には変色した封書が一通入っていた。宛名は「雪子さんへ」、裏には「瑞鶴 機関兵 鳴海勝一海軍予備少尉」とあった。

六十数年前、戦時中になんらかの事情で海に預けた手紙なのだろう。そんなことを考えていると村川は"今なにかしなければいけない"、という気持ちが湧き上がり、小さなカバンに少しの荷物を入れ、手紙を手に慌しく家を出た。「お父さんはな、馬鹿なことをしにいく…手紙を届けに行こうかと思う」閉ざした扉の向こうの息子へ届くはずのない言葉を残し…。

奈良、滋賀、大阪、広島…手紙の主・鳴海勝一の縁の人を探し出し、少しずつ手がかりをつかみながら、人々の厚意に助けられて、村川の旅は続いていく。次第に明らかになっていく、鳴海勝一と雪子の悲しい運命。そして村川の重く沈みこんだ心が変化していく…。

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