#53 東京都 奥多摩
2004年8月3日放送
龍厳渕の伝説
昔、現在の奥多摩あたりに龍厳渕という所がありました。その渕の上に一軒の家があり「ひめ」という名の美しい娘がいました。
ある時、若い男が現れて娘を嫁にと毎夜来ては両親に頼むのでした。しかし、この近くで見かけない男なので両親は返事をためらっていました。そこで、いったいあの男はどこから来るのだろうと、両親が後をつけてみると、驚いたことに男は蛇となって坂をすべるようにして渕の中に消えてしまいました。
両親は、これは大変なことになると、ひそかに娘を他家へ嫁に出しましたが、その娘はまもなく病気になり死んでしまいました。両親は悲しみの中、娘の墓を立て、側に椿の木を植えて弔いました。
そんなある朝のこと両親が墓へ行ってみると一匹の蛇が椿の木に巻きついたまま死んでいました。両親はその蛇があのときの蛇だったと知り、これほどまでに娘を慕っていたことを哀れに思い「ひめ」の墓の横に手厚く葬ってやりました。時が流れて椿の木も大きくなり、真紅の花をつけ、渦巻く渕の流れに花びらを落とすまでになって花は毎年咲き続けました。
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