#44 福井県 越前大野
2004年6月1日放送
麻那姫(まなひめ)伝説
今から1200年あまり前、十文字という長者がいた。長者夫婦には子供がなかったので、子供が授かるようにと毎日神様に祈った。願いが叶いかわいい女の子が生れ、「麻那姫」と名づけられた。たいそう美人で親孝行で村人たちにも親切だったので、皆から可愛がられた。
ある年、大かんばつがあり、村はとても苦しんだ。そんなある夜、長者の枕元に女神が現れ、「この干ばつは竜神の怒りです。しかし、あなたの日ごろの神を敬う心と、困っている人たちを助けた行いに免じて雨を降らせましょう。その代わりに、娘を竜神に捧げるように。」といって消えてしまった。夢から醒めた長者は、たいへん悲しんだ。麻那姫は長者に「私は、人々を不幸から救うために命を授かりました。この命を竜神に捧げることでみんなが救われるなら、喜んで捧げましょう。」と言って、淵に身を投じた。
その時、空が曇り、雨が降り始めた。作物は息を吹き返し、川の流れは田を潤した。村人たちは喜び、自らを犠牲にした姫を慕って、淵のそばに松を植えて乙姫松と呼び、毎年姫の霊をとむらう祭りを行なった。そして姫が身を投げた川を真名川と呼び、そのやさしい心を後の世まで伝えた。
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