◎インタビュアーの目
インタビュー中、テンポよく言葉を繋いでいた辻が、急に押し黙った。黒目がちの目にみるみる涙が溢れる。しばらく両手で顔を覆った。だが、ものの1分もしないうちに「ごめんなさい」と顔を覗かせると、その目は笑っていた。その自己コントロールの巧みさに、辻の人間的な器の大きさを見た思いだった。2歳の息子・真一郎君の話題になった時である。いかに聞き分けが良くなったか、自慢気に話している途中で、突然、顔が歪んだ。小学生ぐらいになったならまだしも、一番手のかかる時期に、子供と離れ離れにならなければならない母の気持ちは、身体を削ぎ落とされるほどに辛い。そんな痛みを隠しつつ、コートでは若い選手たちと一緒に汗を流し、練習が終わればメンバーの心をサポートする。全日本のメンバーは、戦う精神は吉原から学んだが、チームワークの基礎作りは辻から教えられた部分が多いと口を揃えた。吉原と辻。この34歳コンビがいなかったら、今の全日本の強さは生まれなかったのではないかと思う。真一郎君は、アテネでカッコイイ母ちゃんを見るため、もう少しの我慢である。
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