◎インタビュアーの目
インタビューしたその日、大山選手は退院して来たばかりだった。合宿中に足首を痛め、10日間ほど病院のベッドの上にいたのである。練習の遅れを気にしているのか、口数は少なかった。鍛え抜いた身体を褒めても「入院していたせいで筋肉が落ちちゃったんです」と悲しげな目を向ける。しかし、その視線はこちらがたじろぐほど強い。「目は口ほどにものを言う」という諺通り、彼女の瞳の奥に湛えた強い光は、饒舌だった。喘息という持病を抱えながら、その苦しみを友達にし、小学校、中学校、高校と全国優勝を経験している。思春期の遊びたい盛りを潔く切り捨て、その代わりに手にしたものは、肺が焼けつくような身体の痛みと精神の苦悩。それでも、一時も白球から目を逸らすことのなかった濃密な物語性が、その視線には内包されていた。187cmで80kg。日本女子バレー界に初めて誕生した、パワーを備えた大型サイドアタッカーとも言える。ワールドカップで私たちは、クロアチアのイエリッチやロシアのガモアに匹敵するような日本人選手の誕生を目撃することになるかもしれない。大山選手の視線には、そんな物語も隠されていた。
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