海峡を渡る
バイオリン
プロデューサー
高井一郎

今回は、陳昌鉉さんという実在の方をモデルにしたドラマということもあり、ただでさえリアリティにこだわる杉田組、それはそれは細部にまでこだわった、妥協のまったくない制作現場でありました。

美術監督の西岡さんもこだわりの人。セット製作のために韓国から持ち込んだ美術用の大道具小道具は2tトラック2台分。韓国の美術チームは、2ヶ月間ウィークリーアパートに泊り込んでセットを仕上げてくれました。
また、韓国ロケマネージャーの李運洙さんも、杉田監督をしてこだわりの人と言わしめたほどの人。ロケハンだけで韓国全土を2周しました。実景ロケまで担当するスタッフにいたっては、トータルで5周以上の距離を移動したほどです。

さらには演じる草なぎさん、菅野さんが、これまたこだわりの人。巨大扇風機が作り出す台風の中のシーンでのこと。ホースから出る大量の水と風でもう目も開けていられないほどなのに、紫色の唇を震わせながら『もう一回お願いします』と言ってきたり、床に頭を打ちつけるシーンでは額から血を流し、監督がOKを出しているにもかかわらず納得しなかったり。

こんなこと、予算やスケジュールを管理しなければいけない立場の僕が、単純に喜んでよいことではないかもしれません。でも、スタッフ・キャスト皆が『いいものにしよう』、ただそのことだけを考えている、そして全ての人が皆 いい顔をしている、そんな幸せな現場でした。
最後に、これは単純に喜んでいいことですが、監督の運、というよりは監督補の小林くんの手柄ともいえるのですが、4ヶ月にわたってずーっと天候に恵まれたこと。これだけ台風の当たり年だったにもかかわらず、一度たりともロケ日とぶつかることはなく、しかも台本上「台風直後」というシーンを撮影する日には、前日に台風が通り過ぎ、当日はまるで仕込んだかのような増水した濁流の川と台風一過の青空という強運ぶり。とても心強い味方でした。

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