海峡を渡る
バイオリン

■制作レポート〜その1〜 原作者 陳昌鉉氏をスタジオに迎えて

7月4日クランクイン。暑い夏とともに始まった「海峡を渡るバイオリン」の収録は1シーン1シーン丁寧に、万感の思いを込め撮影が進められ、ついに、10月31日に4ヶ月にわたる収録がクランクアップを迎えました。

この間、主演の草なぎ剛、菅野美穂を始め、陳昌鉉氏の壮絶な半生を描くために結集したそうそうたる出演者たちは激動の人生を演じ、そして生きたのです。

陳昌鉉、という実在の人物を演じることに草なぎは当初「自分とは違う、と思われないようにしなければ」と語っていましたが、そのような言葉は当然ながら杞憂に終わりました。
収録も2ヶ月を過ぎた8月の終わり、陳昌鉉氏の半生を語るには欠かせない重要な転機となるシーンを撮り終えた撮影現場を、陳昌鉉氏ご本人が訪ねた時、ご本人から語られた言葉がそれを物語っています。

「実話なんです、草なぎさん。菅野さん、妻なんです。その時は無我夢中でしたが、当時の自分を客観的に想起して胸がつまる思いです。自分と重なります。自分の真実、若い頃の真実を目の前で体験する。なんとも言えない思いです。泣けますね。」
と言葉をつまらせながら、陳氏はあふれ出す思いを止められずに語り続けたのです。
「痩せ型で皮下脂肪の少ないさらっとした感じがぼくの若い時に似てる。素朴なさらっとした演技をしてくれて感動しました。」
陳氏の目に映っているものは、草なぎ剛ではなく若き日の陳昌鉉、菅野美穂ではなく若き日の南伊子でした。菅野美穂を見て陳氏は、
「楚楚とした、あどけない感じが似ています。懐かしいですよ。彼女を菅野さんにだぶらせると鮮明に(当時のことが)よみがえります。一目ぼれした人だな、と思うとたまらない。ぼくの家内のほうが美しかったかな?」とスタッフ、キャストを笑わせながらも瞳は潤んだままでした。

「職人は命を削ってバイオリンを作ります。彼も俳優魂を持っているから、そういう気持ちでやってくれるでしょう。」と草なぎ剛に熱い気持ちを残し、スタジオを後にしました。

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