なぜ「地下アイドル」を名乗るのか? "不思議の街・秋葉原"で偶像を生きる人々を追った。
第25回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『だから、アイドル。TOKYO 不思議の街の住人たち』 (制作:フジテレビ)
<7月12日(火)25時35分〜26時30分>
東京・秋葉原―。
世界に知られるサブカルチャーの発信地でもあるこの街は、人々の幻想と現実が入り混じる不思議な街だ。
急増する外国人観光客や中国人の買い物客で賑わう大通りを1本それると、雑居ビルの中には、小さなライブスペースが点在する。
毎夜、そのステージに立ち、歌い踊るのは「地下アイドル」と呼ばれる人々。
しかし、その姿は、我々が思い描く「アイドル」とは異なる。彼女たちは大衆に求められ、選び抜かれた、輝けるアイドルではない。自分がやりたいから、"アイドルをやっている"のだ。
そんな彼女たちを秋葉原の街や地下アイドルファンは、決して否定することなく、温かく受け入れてくれる。それはまるで、現実なのに幻想のような世界…。
なぜ彼女たちは、ここにたどり着き、歌い、踊り続けるのか?なぜ「アイドル」を名乗るのか?"不思議の街"で偶像を生きる人々を追った。
現在、「地下アイドル」が活動するライブスペースは、都内各地に点在し、秋葉原だけで少なくとも25カ所ある。
そのステージに立つのに、オーディションなどは存在せず、見た目も、年齢も、国籍も問われることはない。どんなに歌やダンスが下手でも、ブーイングどころか、客は手拍子と掛け声でライブを盛り上げてくれる。ライブのギャラがないのは当たり前、それどころか、出演料を払ってステージに立つこともある。
今や、その気になりさえすれば、誰だって、今日から「地下アイドル」になれる。
「アイドルになる」のではなく、「アイドルをやる」のだ。
そんな地下アイドルの世界は、いつしか、現実社会の中で生きづらさを感じ、居場所を失った人々の"受け皿"となっていった。
「地下アイドル」を名乗る彼女たちは、誰かに求められた"偶像"ではない。彼女たちがステージで演じているのは、"好きになれる自分"、こうでありたい"自身の偶像"なのだ…。
○ネットで"大炎上"地下アイドル歴6年 エリザベス(33)
2010年から「地下アイドル」を始めたエリザベス。2年前からは、二人組のユニットとして活動を続けている。歌は下手、ダンスもヘンテコ、アイドルというには若くない…それでも、地下アイドルの世界は彼女を受け入れてくれた。
2015年10月、たまたま受けた情報番組の街頭インタビュー。「地下アイドル」という肩書きの二人の姿が放送された瞬間、ネットが"大炎上"。無名なはずの二人の顔写真がネット上にあふれていた…ネットの住人たちは、彼女たちが「アイドル」を名乗ることを許さなかった。
優しく受け入れられていた"地下の世界"から、ほんの少し"地上の世界"に顔を見せただけで、顔の見えない多くの人に否定されたエリザベス。
相方は、この"炎上事件"の精神的なショックで声が出なくなりステージを去った。ユニットも解散。しかし、エリザベスはそれでもステージに立つことを決意した。
地下どころか「地底アイドル」と揶揄されながら、それでも、歌い、踊り続けるエリザベス。彼女は「地下アイドル」にこだわる理由、それは彼女が歩んできたつらい過去にあった…。
○借金450万円"鳥のエサ"で食いつなぐ 極貧「地下アイドル」きらら(38)
体は男性で、心は女性だという、きららは、38歳で「地下アイドル」を始めた。
大学卒業後、職を転々とし、抱えた借金は450万円。23区内では格安の家賃2万9000円の風呂なしアパートに住み、主食は、家畜の飼料に用いられる"くず米"。目を疑いたくなるような"極貧"生活を続けていた。
ステージでは、歌と自作の詩を披露する「詩人アイドル」のきらら。なぜか、華やかに着飾るどころか、ボロボロに傷ついたケガ人の姿でステージに立つ。
ライブで「大ケガをしたサンタクロース」を演じた2週間後、解体工事の現場で転落。救急搬送されたきららは、あの日演じたサンタクロースと全く同じ格好で、ベッドに横たわっていた。
この大ケガで肉体労働の現場で思うように働くことができず、収入は減り、職を失うきらら…どん底だった生活は、さらに深い底をのぞかせるようになる。
それでも「地下アイドル」だけは、辞めたくない。きららが「地下アイドル」にこだわる理由、それは「ありのままの自分」を生きてくることができなかった、きららの過去にあった…。
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