海の上の診療所
インタビュー

vol.03
内村葵役 藤原紀香さん

まず、今回の企画を聞いた時の印象からお願いします。実在する巡回診療船『済生丸』がモチーフになっているドラマですが…。
『スーパーニュース』の特集も拝見しましたが、「日本は島国なのに診療船ってこんなに少なかったんだ!?」というのが正直な思いでした。で、済生丸のことを調べていくうちに、阪神淡路大震災のときにも救援活動で活躍したということも知って…。やはり、地震や災害に備えて、日本にはもっと診療船が必要なんじゃないかな、と思うんです。この先どんどん高齢化が進めば、本土の病院までいけないおじいちゃん・おばあちゃん達が増えるわけですから、もっと必要性が高まると思うんです。
この作品はコメディーですが、このドラマをいまお伝えすることで、まず診療船の存在を若い世代にも知ってもらえれば、と思います。
国会でも山東昭子さんが診療船の必要性を強く訴えておられますが、船というツールを医療においてももっと活用すべきじゃないかな、と思います。

今回の内村葵というキャラクターを演じるにあたって、制作サイドともディスカッションされたと思いますが、紀香さんが特に意識されている点を教えてください。
中江(功)監督からは、「葵さんはとにかく華やかで、白衣の下はとんでもなく派手でいてほしい。ルールや枠に捉われる必要性はないし、この診療船の華であり、瀬戸内海の島々のおじいちゃん、おばあちゃんたちが葵さんを見ていて楽しく幸せになるくらい華やかでいてほしい」と言われました。逆に、そんな衣装を探すのが大変だったりしましたけど(笑)ファッションを楽しめるので、わくわくしましたね。
あと、話す言葉については、台本は標準語で書かれていますが、それを全部関西弁に変えたのも監督のご意見でした。監督は、「たとえば…友近さんが紀香ちゃんのものまねをしてるようなコテコテの関西弁ではなく、僕のイメージでは、もうちょっと柔らかい、普段紀香ちゃんが使ってるような言葉がいい。僕は東京の人間だから、そこをこうしてほしい、とは言えないけど、わかるよね?」って言われて。「なるほど、大阪じゃなくて、神戸寄り、っていうことですよね?」と返したら、「そうそう、それ!」っておっしゃったので、「わかりました。任せてください!」と(笑)。で、実際に撮影が始まったら、どうしてもつながり的に難しいツッコミとかがあったりしたんですけど、標準語だったら成立していないところでも、トン、と突っ込めるので、「やっぱり便利だなぁ」と監督も喜んでくれています(笑)。
目指しているのは、コテコテではなくて、たおやかな、自然な感じの神戸の女性の言葉です。私も中・高・大と神戸の学校ですから、故郷の言葉をつかえることは喜びですね。
葵さんのキャラクター的には…最初は「変わっている人やなぁ」って思いました(笑)。真面目に勉強をしてきて医者になって、海診丸に乗って、周囲からは意外!?と言われる日内(荒川良々)を夫に選んで…。彼女のキャラクターについて脚本家さんが書いてくれたものを読みながらいろいろ考えていくうちに理解できたのは、彼女は「何故?」と自分の好奇心や探究心に正直にとことん追求してきた人なんだ、ということでした。カラダにおけるなぜ?の探究の先が内科医であり、男の人に関しても、「こんな人に会ったことない…もっと知りたい。この人の中身を!」という探求心からであり…。で、サルサという、熱い何かを内面に持っていないとできないような踊りで繋がっている(笑)。面白いな、と思いました。サルサもめっちゃ練習して踊って撮影したんですが、1話を見たらあまり使われていなくて、正直「アレ!?」って思いました(笑)。監督に聞いてみたら、「どうしても時間が足りなくて。でも、DVD特典に使うから安心して」だって!(笑)。ちなみに、4話では瀬戸内海バックに踊るシーンがあるかも!?

ギャップが大きいキャラクターという印象がありました。「こんな派手な感じの人が、どうして海診丸に乗ったのか?」と。おそらく、普通の医療活動よりも大変なことが多いでしょうし。
このドラマに入る前に役作りとして船医の方々に取材したりしましたが、本当に大変なことだと思いますよ。乗ったら何年も乗ったきりですしね。実際、やはり都会にいる方が最先端のところにいられるわけですし。でもそこを捨てて自分から志願したのは何故だろう、と考えると、葵は、やっとのことで自分の住む神戸で目指していた内科医になり、体についての何故を突き詰めていったその先に、人から「ありがとう」と言われる職業につきました。でも、都会にいたら、人と人とのつながりが希薄になる部分もあると思うんです。知り合いの女医さんも「そういう部分は否めない」とおっしゃっていました。そんな中で、医者としての仕事に対する情熱、原点に帰りたいという思い、人から「ありがとう」と言われる仕事を続けられることへの感謝、心底、人と人の触れ合いを求めるのなら、私を心底必要としてくれる先があるなら、と考えた結果が海診丸だったのだろうな、と思います。きっと、神戸の友だちとかにもいろいろと言われたはずだと思うんです。だけど、「ここが今私の居場所!」ときっぱりと言えるのが葵さんの魅力なんじゃないかな、と思います。

共演陣も個性的な顔ぶれです。実際にお芝居をしてみての印象をお願いします。
翔太くんは、とても真面目でストイックなところが素敵だと思います。だから、こんな風にテンションをアゲていかねばできないような"寅さん"的なものを演じるときには、初めは葛藤も不安もあったのだと思うし、そこに気持ちを持っていくまでは難しかったと思うんです。でも彼は、普段から監督やプロデューサーとよくディスカッションしていて、でも、現場を盛り上げることも忘れず、いい座長だと思います。1話の放送が終わった次の日、翔太君から「葵先生の関西弁や存在に助けられているところがたくさんあります。ありがとうございます!」と、爽やかスマイルで言ってもらえて、心から嬉しかったです。チームワークで頑張っていきたいです!

松田さん、紀香さんを筆頭に、お芝居に対して真面目というか、ストイックな方がそろっている印象はありました。
そうかもしれないですね。武井咲ちゃんも、本当に一生懸命で、純粋で、もう天使みたいで。荒川さんも…とても真面目でお稽古好きなのが伝わってくる。目の前でお芝居をされるわけですが、私たちは夫婦役なので、私を見る目と、他の役者さんを見る目の見開き方の違いとか(笑)。それを見ているだけで、笑いをこらえるのが大変なんです。寺島の兄貴も、現場がどんよりしている時など「よし、巻いていくぞ!」って盛り上げてくれますし、福士くんはいつも天然で佇まいが面白く、翔太くんにもとても可愛がられていて…みんなでほんわかとやっています(笑)。

瀬戸内海でのロケに関してはいかがですか?キャスト、スタッフが生活をともにしながらロケが行われているわけですが。
私の役はロケが少ない方なんですけど、都会で見たことがないようなどえらい虫が出た、とか(笑)。咲ちゃんが、「もう凄かったです!ゲジゲジひとつにしてもサイズが…」って言ってて、想像しただけでスゴイ!と。ただ、食べ物は美味しいし、景色は最高だし…瀬戸内海の風景も堂々とした出演者のひとりですよね。中江監督がずっとおっしゃっていたことですけど、風景も大事に大事に撮っていることがよくわかりました。
実は私も、もっとロケ増やしてほしいんです。ロケの先々で、島の方たちが声をかけてくださるんです。「おはよう!」とか「頑張ってや」「紀香ちゃん見れて、生きててよかった!」とか。なんだか嬉しいですよね。そういう島の雰囲気が、モチベーションを上げてくれるんです。また後半戦もロケたくさん行きたいなあ♪映像のパワーも違いますし!

これまでの撮影の中で、特に印象に残っているシーン、大変だったシーンを教えていただけますか?
私自身、タンゴやジャズやバーレスクなど、いろいろな踊りを勉強してきましたが、実はサルサは初めてだったのでドラマが始まる前からレッスンをしていたんです。常に腰から下を8の字に動かしていなければいけないので、普段から腰が動いている状態(笑)。
あとは、言葉ですが、こんなに自然な関西弁はいままでテレビで堂々と話したことがなかったので、普通に出すのが逆に難しいな、と最初は思っていました。いまは台本に書いていない言葉でも、葵として現場に入ればスッと自然に話せるようになってきたので、役が自分の中に入ってきたな、と実感しています。その上で、コメディーの部分と、テクニカルな手術シーンの部分とのメリハリは、いつも頭に置いています。私たち夫妻や昇くんや船長や乗組員のみんなが上手いことかみ合ってこそ、主演の翔太くんとヒロインの咲ちゃんのやりとりを引き立たせることができるので、遣り甲斐と難しさを同時に感じています。だーっとみんながしゃべって、トン、と葵がつっこみを入れる、いう流れの連続はとても難しいんだなと。今回は、コメディーだからそういう間合いが勝負じゃないですか。間とかテンションとか波とか、そういう空気を現場で感じながら楽しくやっています。

最後に、このドラマを応援してくれている視聴者のみなさんに向けて、メッセージをお願いします。
1話、2話、を見てくれた方から、たくさんのメッセージをいただきました。笑いがあって、涙があって、コメディと手術のシーンなどのコントラストもとても良い!と。
このドラマを見ると、また明日から頑張れる力が湧くんだ!という感想をたくさんいただきました。とっても嬉しいです。今回、私は助演の立場で、いろんなバランスを取りながら、ドラマを盛り上げたいと思っています!葵さん共々、『海の上の診療所』、応援、よろしくお願いします。

戻る
海の上の診療所
(C)フジテレビジョン