積木くずし
最/終/章
Interview

原作者 穂積隆信
現在80歳現役俳優として元気に活躍中の穂積さん。今回の作品は一連の積木くずしシリーズの完結編として書かれたという。そのあたりのお気持ちを伺ってみた。

Q.現在はどのような生活をされていらっしゃるんですか?
「今の妻は数年前に脳梗塞で倒れまして、介護施設に入院していて週3日介護に通っています。年を取ると最後まで介護できるのかとの不安はありますが一緒にいると安心できます。今は、高次脳機能障害を抱えていて、幻想を見るらしいのですがその合間にすごく冴えたことを言ったりします。表現の仕方が文学的になったりしていて、一緒にものを考えることができて楽しいです。今は、お陰さまで無事に元気にやっています」

Q.俳優・穂積隆信としてのお仕事はいかがですか?
「もう年ですが…この間松竹映画の撮影で九州に行きました。認知症の老人役で、介護施設に入所していて介護士の女性に触りたがる役でしたね(笑)。この『積木くずし最終章』にも、僕だと分からない老人役で出させていただきました。俊ちゃん(中村雅俊)にお会いした時は、彼が白髪の扮装だったのですが、格好良かったですね」

Q.穂積さん役を中村雅俊さんが演じられますが…?
「僕と俊ちゃんは古い付き合いで、彼が文学座でデビューした時に一緒でした。仕事が終わった後、しょっちゅう飲んでいましたね。彼といると安心するんです〜包容力があって、ですから彼の周りにはすごく人が集まります。そんな彼が演じてくれるとは恐れ多いです。二枚目ですし、僕のことを一番知っているのが彼なので、OKいただいた時はうれしかったです。感動しました」

Q.今回の「積木くずし最終章」を書こうと思われたきっかけを教えてください。
「積木くずしは30年以上前の話です。当時大ベストセラーになって、娘がそれに反抗して覚せい剤にまで手を染めてしまい、そのことに対して最近すまない気持ちが湧きあがってきまして…、実はあの最初の「積木くずし」を書いてから最近までは、"やっぱり自分は正しかったんだ、娘の由香里が更生できなかったのは本人が悪かったんだ"と親の正しさを正当化していました。それが段々年を経て、いろんなことがあって…娘の由香里は亡くなる前に介護士の資格を取って、お年寄りのために頑張ろうとしていたんですね。彼女は親を恨むことを乗り越え頑張っていた矢先に、病により人生の幕を閉じた…それに比べて僕はどう変わっていったんだろうと…。由香里の母はお金を使い込んだ罪を感じ自殺しました…その元妻を僕はどこかで恨んでいて許せなかったんです。それが今回、元妻の遺書ともいえる日記が出てきて、元妻が自殺した原因が分かったときに逆に申し訳ないと思うようになったんです。なんていうか自分自身の罪深さを感じて…とにかく今は二人に僕の罪を素直に謝って死んでいきたいなと思い、今回の本を書きました」

Q.今回の最終章の本の中で一番言いたいことは?
「僕は由香里が死んで、前の妻が自殺したことに対して、何の責任も取っていないんです。号泣して泣き叫んだだけで由香里に対して親としての最終的な責任は取っていない…、本当は、由香里が生きている時に僕が再婚していても由香里の母のことについてきちんと話さないといけなかったんですよね。 元妻が自殺した時も、自分の命を自分で絶ったのですから大変なことなのにその原因を探ろうともしませんでした。自分が正しいからそれでいいと思って逃げていたんです。考えてみるとものすごく僕は卑怯なやつです。ですから本を読んでくださる方には、一つ一つのことから絶対逃げないで欲しいということだけは伝えたいです。追及することを怠ること、それは誠実さがないということですよね。僕は「積木くずし」を書いたことを後悔するんじゃなくて、本を書いた後、由香里に対しても自殺した元妻に対しても誠実ではなかったことを後悔しています。それが今回の元妻の手紙によって気付かされたんです」

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