はだしのゲン
- スタッフコメント -

中沢啓治さん(原作者)

はだしのゲンのテーマは、麦なんです。冬の冷たい霜柱を押しのけて、麦は芽を出しているんです。何度も何度も踏まれても、麦はまっすぐ豊かな穂を出す。戦争や原爆を吹っ飛ばして生きる人の人生の応援歌として、このマンガを描きました。

実は11巻目を描きかけたんです。でも、最後まで見せない方がいいんじゃないかと思い直しました。余韻があって、読者が想像してくれたら、それが一番強く印象に残るのではないかと。それで、描くのをやめたんです。

(ドラマとして放送することが)反戦思想が一番伝わるんじゃないかと。テレビ局がやってくれれば一番良いんじゃないかと常々思っていました。原爆という重苦しいテーマを、ドラマという形でも伝えられることは、作者冥利に尽きます。

脚本は、膨大なエピソードを盛り込んだ物語のなかから、どこを引っ張り出すのか決めて、短くするのは大変だろうと心配していたのですが、原爆の悲惨さも出ているし、ゲンら子供たちが生き生きと描かれていて、とてもうまくまとまっていると思いました。

中井貴一さんの配役は、僕の頭の中で描いているのと同じだったので、聞いたときは驚きました。以心伝心というかね。"へぇー"と。

ドラマ収録中の撮影所を訪れた際には、タイムスリップした気持ちがしました。家の間取りは少し違いますが、だいたい同じような感じでしたし、ああいう路地があったなぁなどと、親父のことなんかを思い出しました。英子(姉)もよう似てるんですよ。自分が元だったなぁという思いがありました。

毎年、8月6日が近づいてきたなと思うと、あの場面がぱあっと思い浮かぶ。その感覚は年々根強くなっていきます。被爆したあの経験は忘れません。核の問題が動いている今、戦争と核の恐ろしさが伝わっていけば、阻止できるんじゃないでしょうか。そのためにも一人でも多くの人にこのドラマ『はだしのゲン』を見ていただかなければダメだと思うんです。次の世代にもバトンタッチしていきたい。

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