最高の離婚
インタビュー
【vol.10】濱崎光生役 瑛太さん
Qこれまで光生を演じてきて、大変だったことは?
監督がよく言っていたのは、「光生はどこかにものすごく力が入っちゃってる人」ということだったんです。どこに力を入れるかで、見た目は全然変わってくるので、手探りでやっていくうちに、手がグーになっちゃっているとか、ちょっと肩が上がっちゃってるとか(笑)。だから、割と体の変なところが凝るんです。最近は、肩甲骨の中あたりがずっと痛い(笑)。
Q光生の口癖は"つらい"でしたが、瑛太さんに襲い掛かってきたつらさとは?
前半戦は、ぎっくり腰になったり、突然離婚されてしまったりとか、設定的にも良いことが何も起きないんですよね。それって、演じる面白さだとは思うけど、ホントにつらくなっていくんですね。つらいというか、きつくて…。ずっと落ち込んでいるような状態ですね(笑)。でも、そこで"光生ハイ"みたいなハイ現象がどんどん起きていくんです!!つらいとセリフのテンポ感、シーンの長さとかで感覚がマヒしていくようなところがあるんですね。でも、どこかでちゃんと役を客観的に見て、自分なりに何かを伝えようとする部分があって…それが浸透していったからかもしれないですけど、だんだんと自然に光生として動けるようになっていって…それが僕の演じる楽しさなんです。
つらいシーンばっかり演じていると、これは坂元さんのアクセントだと思うんですけど、結構長い4人のシーンの最後に「ファンキーでモンキーなファミリーズになれないよ!」って言っちゃったりとか(笑)。でも、光生は本当のことを言ってるんですね。みんなを笑わせようとか明るくさせようなんて思ってない。本当に感じているからつい言葉に出ちゃうんですよ。僕は、いま光生ハイを通り越しているので、もうワンクールくらいできるんじゃないかって思っています(笑)。
Q台本は坂元さんからのお手紙ともおっしゃっていましたが…。
容赦ないですね。割と前半戦で、光生の告白的な、心情みたいなものが爆発してしまう、みたいなシーンをどこかで期待していたんですよ。でも、一切ないんですよ。ずっと人の告白を聞きながら、前半戦をずっと進めていかなきゃいけないというか(笑)。坂元さんのセリフは、単語の繋がり方も独特なんですよね。でも何よりもキツイのは、光生としての独白がないこと。それが坂元さんの仕掛けなのかなという気もしているし、かといって最終回にはなくてもいいんじゃないかなっていう気もするし。あったら嬉しいと思うんですけど…。そこは怖さと楽しみが入り交った状態ですね。
Q光生に対する思いに何か変化はありましたか?
「究極に何かを突き詰めていったら、光生みたいな人になるのかな?」とは感じますね。あそこまで、世間に対しての歪んだ思いとかを、深く掘り下げたからこそ、光生なりに得た考え方があるんだと思うんです。その突き詰め方は好きですし、僕自身、客観的に見ても光生がもの凄く好きですね。演じているうちに、僕の中でもそれが当たり前になっていくんです。台本を読んでいても「ああ、光生だからこうなんだろうな…」って。もちろんそこには、坂元さんの発想の凄さに対する驚きもあるんですけど…基本的に、光生をどんどん好きになっていっていますね。だから、自分がどうということよりも、結夏と灯里と諒(綾野剛)のことが前よりも凄く気になっていく光生というのも面白くて。諒ってどういう人か最初はわからなかったけど、最近は、「この人はただ自由に生きたいだけの人間じゃないんだな」と思って、光生以外の3人の中では一番可愛い人だと思いますね。女の人って、やっぱり怖いじゃないですか(笑)。綾野剛くんがいいというか、彼が可愛いっていうのはもちろんあるんですけど、諒っていうのは「この人だったらしょうがないんじゃないかな」って思えてしまうような…。放っておけなくなるような、女の人が抱えるような感覚を、僕も持ってしまっているんです。
Q最初のインタビューで、「尾野真千子さんが結夏として動いたりしゃべたりしているのを見ていたら『これは、離婚するな』と思いました」とおっしゃっていました。しかし、物語が進むにつれて、結夏に共感している視聴者の方がとても増えているようです。それに関してはどう思われますか?
結夏が第7話で書いたあの手紙の内容は、実は僕は1回しか読んでいないんです。結夏の本当の気持ちは光生が知らないことなので、僕もそこは意識しない方がいいと思ったので…。おそらく光生は、結夏と一緒にいるとイライラする気持ちをずっと抱え続けていかないといけないんじゃないかな、という気はしています。光生のセリフにもあるように、「性格の不一致パターン」ですよね(笑)。光生は結夏に対して腹を割っていない部分が、どこかやっぱりあるんですよね。結夏だってああいう手紙を書いても、結局破ってしまったということもあるし…。何かひとつあればもしかしたら元に戻れるのかもしれないけど、まあ元に戻っても夫婦ってそんなに簡単に…特にあのふたりは上手くいかないんじゃないかな、っていう気もどこかしています。
Q最後はどうなるかわからない、と…。
僕も10話を読んだときは「あと1話で終わらせられるのかな…」って思いましたからね(笑)。坂元(裕二)さんやプロデューサーさんたちはやっぱりスゴイな、と感動しながら読んでいました。
Q最初のころに比べて、現場の雰囲気は変わりましたか?
一番話題になるのは、やっぱり「この先どうなるんだろうね?」っていうことですけど…。まあ、「美味しいもの食べに行こうね」っていう話が一番盛り上がりますよね。でも、撮影が終わってからのことは、視聴者の方に知って欲しくないという思いがあるんです。今回は夫婦間のこと、男と女のことを描いていて、先がどうなるかわからない話なので、余計にそう感じてしまうというか。その辺で4人で飲んでて、仲良さそうにしているのを見ちゃうと、醒めちゃうんじゃないかな、と。
Q瑛太さんご自身には、ドラマの反響は入ってきていますか?
1、2話を見てくれた人は、みんなちゃんと見てくれていますね。かといって、視聴率が30%とかはいかないんですね、何故かわからないですけど(笑)。周りの人は「面白いよ」「すごいドラマだ」って言ってくれるのですごく嬉しいです。台本が面白くて、現場がいい空気で、なおかつ緊張感もあって、みんな戦っているし、役者陣も一生懸命役を進めていくことと、掘り下げていくことの努力を止めてないから…正直、みんな「つらい…」って言いたいと思うけど、そこの充実感みたいなもので頑張れているんだと思いますね。最後まで演じきりたいね、という話はみんなでしています。
Q最後はどうなってほしいですか?
このタイトルの、『最高の離婚』っていうのが何なのか知りたいな、とも思うし、いろいろ気になるとこもあるんです。結夏が本当に離婚届を出しているのか、とか(笑)。それは僕らは知らないし…。でも、夫婦っていうのは多分、そんな簡単にラブラブないい感じに戻れるわけもないから、もし結夏とまたいい感じの生活が始まったとしても、結局どっかで愚痴っているんじゃないかな、っていう気もしているし…。理想を言えば……やっぱ、キャンプに行くことじゃないですか?(笑)。子どもができて、6人で。キャンプにいって…というのがスペシャルドラマであるかもしれない。でも、僕はハッピーエンドが好きなので、ハッピーエンドは望んでいますけど…でも、そんな普遍的なハッピーエンドではないんだろうな、というところに僕自身も期待しています。
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