最高の離婚
インタビュー

【vol.1】濱崎光生役 瑛太さん
Q濱崎光生というキャラクターに対して、どんな印象を持ちましたか?
どういう人、というよりも、まず坂元(裕二)さんが書かれた台本に圧倒されたというのが正直な気持ちでした。坂元さんからの挑戦状なのかお手紙なのかわからないですけど、膨大なセリフがあって、愛情をたくさんいただいた感じがしたというか。なおかつ、設定上での揺れ動きや、「あー」とか「えー」とか「はい」とか、坂元さん独特の世界観ならではの、「このひと言にどんな意味合いがあるんだろう?」というセリフ…これは読み進めていくうちにどんどん意味合いが変わっていくわけですけど…に、改めて坂元さんの偉大さも感じました。

Qまったく異なる内容ですが、『それでも、生きてゆく』に通じるものも感じますか?
『それでも、生きてゆく』の場合は、とにかく先が凄く気になったんです。「この次、どうなるんだろう?」と。もちろん今回のお話も先は凄く気になるんですけど、1話をいただいたときに、すでに自分の許容範囲いっぱいいっぱいになってしまったというか…。だから、これをどう咀嚼して、どういう光生にしていくのかが凄く重要だな、と思ったんです。まずこの第1話を自分がどういう意気込みで演じるか、そこにどういう感情が出てくるのかな、ということを探っています。

Qつかみづらい部分もありましたか?
すでにもの凄く完成度が高いので、このままやればいい、ということではあるんですけど、このままやるにしても、難易度がもの凄く高いような気がしたんです。普通の夫婦のホームドラマというか、日常を描いた人間ドラマですけど、そこにおかしみみたいなものも生まれてくるという意味ではコメディー…ライトコメディーでもあるので、それを僕が演じる上で、限定されていないジャンルにしたいというか…。坂元さんの世界観を壊さないようにしたいし、もちろん宮本(理江子)監督がイメージされていることについていきたいということもありますけど、まずは、自分自身がどういう心持ちで臨むか…もし笑いを生み出したいということがあるのであれば、それは狙うのではなく、勝手に起きていくものなんじゃないかと思いました。

Q第1話の冒頭から歯医者さんで愚痴をいうシーンがありますが、「何、この男?」と思われるかもしれませんね。
世の女性から嫌われればいいな、という思いはありますね(笑)。理屈っぽいし、愚痴は言うし、お酒は飲まないけど、ひとりで歯医者に行っては生活に対する不満のはけ口にしているし、元カノに会っちゃうし…最低ですよ(笑)。女性スタッフからも「私のタイプは(綾野剛さん演じる)諒さんです!」ってハッキリ言われました。でもそれは、役者冥利に尽きるというか、「あの役って、瑛太そのものなんじゃないか?」と思われても別にいいです(笑)。

Qそんな光生が、妻の結夏(尾野真千子)さんと離婚することになり、彼にとっては大事な思い出でもある元カノの上原灯里(真木よう子)さんの本当の気持ちも知ることにもなり…。
光生がどういう反応をしていくか、っていうのはやってみないとわからないですね。どういう感情が生まれてくるのか…。それはとても楽しみにしています。

Q光生のような男性を客観的に見て、瑛太さんはどう思われますか?
潔いと思います。へこんだり、落ち込んだり、ビックリしたり…と、いろいろありますけど、何よりも一番好きなのは、自分自身が歪んでいることに気づいていないことなんです。そこはやっぱり、光生の魅力かな、という気がします。きっとバカではないと思うんです。結夏との夫婦ゲンカにしたって、毎回、歯医者でつい言ってしまう愚痴にしたって、言葉の情報としてはもの凄く多くて、それだけのことを人に対して素直に話せる、っていう人間性みたいなものは、思想みたいなものをある程度、自分の中で明確にしているからでもあると思うんです。でもきっと、光生は不運な方に巻き込まれていくというか、素直に生きているからこそ、つまずいたり足元をすくわれたりすることも多々起きてくる。そこにリアリティーがあるだろうし、それが人間ドラマなんじゃないかな、という気がして面白いです。

Q結夏という女性については?
どっかで似た者同士なんじゃないかな、という気がします。本当は、夫婦間というのは修正していかないといけない部分がたくさんあるだろうし、そうじゃなければどちらかが諦める(笑)。多分、結夏としては光生に諦めてほしいんですよ。「私はこういう人間だから全部やってくださいよ。それが当たり前なんだから」って。でも、光生は諦めない。そういった意味で、結夏も自分の歪みにとことん気づいていない。世間体みたいなことも全然気にしていないし、男を立てる、なんて言葉も知らないでしょう。ただ、(クランクインする前に)リハーサルのようなものがあったんですけど、尾野真千子さんが結夏として動いたりしゃべったりするのを見ていたら、僕は「離婚するな…」と思いましたけど(笑)。

Q光生の気持ちがわかる、と。
はい(笑)。本読みをしたときにも感じたんですけど、人間は多面的な部分があるということが面白いなと思ったんです。日常生活でも、友だちと会っているときと、好きな人と会っているときと、お母さんと一緒にいるときは全然違うと思うんです。しゃべり方も、表情も違う。光生を演じていると、みんなに対して態度が違う。それはきっと坂元さんのマジックにかかっているんじゃないかな、というのが凄く面白いですね。だから、台本が上がってくると毎回驚がくするんですけど、先がどうなっていくのか楽しみですし、何よりも、意識しないでおこうと思っている視聴者のみなさんの反応も実は凄く楽しみです。

Q驚がくするのはセリフの量?
セリフの量もそうですけど、よくこんなこと思いつくな、と。

Q特に印象に残っているセリフ、シーンは?
冒頭のシーン、歯医者の診察を受けながら話している人って、あんまりいないですよね(笑)。ちょっと現実離れしている部分もありますけど…。

Q共演陣の印象をお願いします。尾野真千子さん、綾野剛さんとは初共演ですね。
尾野さんは、演じているときは本当に結夏なんですけど、普段は柔らかくて…とても可愛い女性だな、と思いました。凄く真面目だし、お芝居をしていてもディスカッションがしやすくて、気が合うな、と思いました。綾野さんは、「こりゃあ、モテるだろうな」と思いました(笑)。男の色気とかって、磨いてどうこうじゃなくて、まず持っているものとしてあるんじゃないかと思うんです。綾野さんはそういう色気を持った方だと思います。真木さんが演じる役は一番普通の役なんですね。それを彼女が演じるというのが凄く面白いと思います。本読みのときにもう、その人になっている。元カノだから敬語を使い合う距離感だとか、ふとタメ口になって過去のお互いの距離感に戻ってしまう瞬間だとか、そういうところがセリフだけじゃなくて、お互いの空気みたいなもので作っていけるな、というのも感じることができたので。女性の怖さみたいなものもいつか見ることができると思うので、そういう部分も楽しみです。

Q『最高の離婚』というタイトルについてはどういう印象を持ちましたか?
まあ、新聞の見出しが多分「瑛太、離婚!」だろうな、と(笑)。的中しましたね。ある意味、視聴者のみなさんに対して、「これどう思います?」っていうメッセージだと思います。

Q最終回にその意味がわかるのでしょうか?
そうだったらいいですよね。僕は聞かないようにしているので、ラストがどうなるのか、まだわからないですが…。

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