輪廻の雨
- スタッフインタビュー -

演出:並木道子さん インタビュー

この『輪廻の雨』のシナリオは、演出の立場から見て、視聴者の皆さんに登場人物に感情移入しながら観て頂ける作品だと思いましたし、1時間の放送にしては難しいテーマかもしれないと思いながらも、「撮ってみたい」と思わせる描写がありました。
そして桑村さや香さんにお会いしたとき、「この若い女の子(注:27歳)がこんな"重い"世界観を描けるということが凄い」と素直に思いました。この作品を映像化するにあたり、最初に桑村さんと、孝平と修平がこの結末を迎えたときの気持ちはどのようなものだったのか?ということを話し合って、彼らの「感情の流れ」をお互い確認しましたが、その向かっているところは桑村さんも私も同じだったと思っています。先日は2人でご飯を食べに行ったんですよ(笑)。

孝平役の山本裕典さんと修平役の瀬戸康史さんは、今回初めてご一緒させて頂いたのですが、本当にいろいろなことを考え、そしてお芝居のことをきちんと考えている方たちだったので、演出側としてはとても助かりました。今回、撮影前にリハーサルも行ったのですが、そのときもこちらの意図する想いをすぐに汲み取ってくれて…。このドラマでは今までに観たことのない山本さんと瀬戸さんが見られるのではないでしょうか?
私自身が特に印象に残っているシーンは、物語の中盤で、孝平が工場から修平を連れて、2人で道を歩いているところです。このシーンでは修平はほとんど台詞がないのですが、無言のお芝居に本当に力がありました。

今回、私が演出する上で大切にしたのは、登場人物ひとりひとり、今までどういう人生を歩んできたのか、という裏設定を深く考えて撮る、ということ。桑村さんには事前に人物ごとに履歴を書いて頂いて、それをつきつめ、どのような環境で、どんな日々を過ごしてきたのか、さらに時間軸に沿って細かく書いていきました。そして役者さん側にもその設定を伝えて、もちろんスタッフにもそれを同じように認識した上で撮影に入りました。私は今回初めて演出を務めるのですが、演出補として関わってきた作品の、『風のガーデン』でも同じような作業が行われていて、その時の「人物履歴」が凄かったんです。私が監督補、演出補時代にやってよかった、と思ったことは極力取り入れたいと思いました。

孝平が抱いた感情…大事なものを守るために怒りを爆発させてしまうような…は誰もが持っているものだと思います。人間ってそんなに強くなくって、ちょっとしたことでいろんなものが壊れてしまう脆さを持っているのではと思っています。そして、普通に普段生きていることが、いかに恵まれているのか…ちょっと壮大すぎるかもしれないけれど、そんなことを感じながら、特に若い人にこの作品を観てほしいし、表面的な部分だけを探るのではなく、いろいろなことを考えて観てほしい。そこは桑村さんもきっと同じ気持ちだと思います。

私自身はフジテレビらしい、とにかく明るく楽しいドラマももちろん大好きなのですが、視聴者の方に"何か"を感じてもらえるような作品も今後作っていきたいと思っています。

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