カエルの王女さま
インタビュー vol.11
森香奈絵役 久野綾希子さん
澪(天海祐希)さんとのデュエット、素敵でした。
ありがとうございます! あれ、アカペラだったのでとても緊張しました(笑)。心細かったですけど、自然の中で歌わせていただいて…。
香奈絵先生というキャラクターを演じるにあたって、制作チームから何かリクエストはありましたか?
衣装合わせのときに、光野(道夫)監督から、「衣装もモノトーンな感じで、クールなイメージでいきたい」と言われたんですね。「そうか、クールか…」と思いながらやっていたら、監督からは「ちょっと強すぎる」「もうちょっと優しく…」と言われてしまいました。考えてみると、気性の激しい役しかやってこなかったからかな、って思って(笑)。自分では優しい表現をしたつもりが、全然優しそうに見えないという現実に、ちょっと戸惑ったりしましたね。最初のころは、その辺のバランスが難しかったです。
いろいろなことが分かっている存在でしたよね。
そうですね。辛抱強いというか、抑えたところですべてを見ている存在なんですよね。だから、第1話の市長さんとのシーンで凄く怒ったら、「それは後にとっておいてください」って言われたりして。ちょっと耐える感じで、人と接していくんだということが私にも段々わかってきました(笑)。
この現場で天海祐希さんと共演されてみての印象は?
天海さんとはもう20年近いお付き合いで、時々お食事したりするんですけど、お仕事の場でご一緒させていただくのは初めてだったんです。「なんて頼りがいのある、なんて大きな人なんだろう」と思いました。年齢は私の方がずっと上なんですけど、「ついていきます!」ってくらい。宝塚でもトップをやってらしたから、みんなをグイグイ引っ張っていく存在であることはわかっていたんですけど、サラッとして男らしいというか、表にも裏にも気配りができて、めったにいない女優さんじゃないかな、と。あそこまで気を配りながら、なお全体を優しく包みつつビシビシいく、っていうその加減も素晴らしいと思います。「男前やなぁ」って感じ(笑)。
天海さんと久野さんの間には、共通点が多いような気がします。例えば、デュエットのシーンでも、おふたりにしかわからないような何かがあったような気もしたのですが…。
そうですか? それは嬉しいです。天海さんが、相手に余計な気遣いをさせないようにしてくださっているのは私も感じていたんです。だからこちらも、全部とっぱらってスーッとそこに入りこめるんです。私は人と接するのが苦手で、他の人とコミュニケーションしたくても自分の言葉で上手く伝えられないから役者になった、みたいなところもあるんです。初めてお会いする方とはあまり上手くお話できないので黙っていよう、みたいな(笑)。でも、彼女は、10年も20年も一緒にやっている、という雰囲気をごく自然に感じさせてくださるんです。多分、みなさんに対してそうされていると思うんです。
今回のドラマは、歌が中心にある作品です。シャンソンズの歌に関して、久野さんがどんな風に感じているのか、是非お聞かせください。
やっぱり、シャンソンズのメンバーは私と2世代くらい違う…いや、もっと違うかな? 歌が溢れている時代に育った人たちなんだな、って思います。当たり前のように、スッと音に入っていけるんですね。私が舞台をやるとき、初見はホントにガタガタなんですけど、シャンソンズのみなさんは、音楽が体に染みついているような感じがして…。「歌が苦手なんです」とおっしゃっている方ですら、全然ナチュラルに入っていけて、同じようにハモれるというのは、私たちの世代にはあり得ない感じだなと思いました。音に包まれて育ってきたんだな、と羨ましかったです。そういう風にできると、その先の段階でもいろんなことができるようになるんですよ。「私ももっと遅く生まれたかったな…」なんて思いました(笑)。今回のドラマは、歌詞がストーリーを運んでいくようなスタイルじゃないですか。最近の歌って、音が優先なものもありますけど、今回は言葉で曲を選んでいるんだな、と。だから、ハートにビシビシくるんじゃないかな、と。ホントに、いろんな素晴らしい曲があるんですね。知らなかった曲も多くて。だから、そういう曲に出合えたのも嬉しかったです。
サイトにも「○○という曲は知らなかったけど、いい曲ですね」という書き込みも多いです。
私、『ディス・イズ・マイ・トライアル〜私の試練』という曲は全然知らなかったんです。百恵さんのCDを音資料としていただいたとき、震えがきました。「私、この曲ライブで歌います!」って感じでした(笑)。大人っぽい歌がたくさんあるんですよね。10代でこれを歌っていたなんて…。しびれますね。私は、1970年代から80年代の中ごろまでは、家と劇団と劇場しか知らないような生活を送っていて、テレビもほとんど見ていないんですよ。この前、ABBAの『マンマ・ミーア』を演ったときも、『ダンシング・クイーン』しか知らないというくらいで(笑)。その頃の名曲って、知らないので、凄くもったいないことしてきたな、と思ったんです。だから、改めて音楽に浸らせてもらえる機会をいただけたのも嬉しいです。ただ、今回コーラスをやらせてもらっているんですけど、実はコーラスってやったことがなかったんです。楽なメロディーばっかり歌っていたので、「こんなに大変なことをやっていたんだ?」って(笑)。みんな、パッと初見で歌えるんですね。大島蓉子さんもおっしゃっていましたけど、私もとりあえず黙って聴いていて、家に持って帰って、100回でダメでも101回やればなんとかできるかな、と思いながらやっています。参加させていただけたのは嬉しいんですけど、戦いの日々でした(笑)。
演者さんは撮影以外にもレッスンやレコーディングがあり、かなり大変なスケジュールでしたよね。
「これ、初見でいま歌ってて、あくる日レコーディング!?」みたいな感じですけど、みなさんそれができちゃっているんですからね。大変だと思うヒマもないくらいの状況だと思うんです。凄い軍団ですよね(笑)。テレビの中では、さりげなくやっているように見えますからね。本当に真剣に取り組んでいるからだと思います。
だからこそ、画面からもメッセージが伝わるんでしょうね。
歌の力って凄いなって思います。私もめげたときは、誰かのコンサートを聴きにいくんです。そうすると、たくさんエネルギーをもらえて、「私ももう1回、頑張ろう!」って思えるんです。歌って、そういうパワーがありますよね。
最後に、番組を応援してくれている視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
このドラマに出演させていただいて改めて思ったのは、人は、信じるものがあれば底力が出るんだな、ということ。そういうところをみなさんにも感じていただけたら嬉しいです。絶対に音楽堂は守ります! 最後まで応援してくださいネ!
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□カエルの王女さま
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