カエルの王女さま
インタビュー vol.8

馬場みぞれ役 大島蓉子さん
クランクインの前にレッスンがありました。まずは、そのときの印象からお願いします。
いきなり歌の練習から始まって…。私は譜面が読めないので、初見で歌うことができないんです。でもみなさんは、譜面をパッと見てもう歌えるんですよね。だから、私だけ、違う星にポンって捨てられたような感じでした(笑)。とにかくわからないので、初日は何も進めませんでした、ひとりだけ。それからも、結局、耳で聴いて覚えるしかないので、家に帰ってからもずーっと聴いていました。私は全部下のパートなので、それも難しくて…。歌わないパートがあって、また自分のパートになったりするとまた混乱したりしていました。

普通の連続ドラマですと、顔合わせの後はもう撮影が始まるわけですけど、その前にレッスンがあって、しかも撮影中も歌とダンスのレッスンはずっと続いているわけで、演者さんにとってもかなりハードな現場ですよね?
そうですね。物凄くハードです(笑)。レコーディングもありますしね。

今回、みぞれさんというキャラクターを演じるにあたって、監督から何かリクエストはありましたか?
何もありませんでした(笑)。「違ったら修正してくださるから…」と思いながら勝手にやってるだけで。ウチは旦那さんと子ども4人いるので、彼らに助けてもらった感じですね(笑)。

澪役を演じている天海祐希さんとの共演に関しては?
凄い方です。すべてが凄い。もともとファンでしたし、宝塚も見に行きました。以前1度だけ、ほんとにワンシーンだけ、自由が丘の路上でご一緒させていただいたことがあったんですけど、そのときのことも覚えていてくださって…天海さんは、1回でもご一緒したことがある方は忘れない、とおっしゃっていました。エキストラさんのことも覚えているそうです。私にはとても真似できないです。私たちだけじゃなく、エキストラさんに対してもアドバイスをくださるし。あれだけ山のようなセリフがあるのにそれも完璧ですし、しかも臨機応変にお芝居もできる方なので、私も見習わなくちゃと思うんですけど、あまりにも凄過ぎてどれを勉強すればいいのか…というくらいです(笑)。

スタッフのこともよく見ていらっしゃいますよね。
見ていらっしゃいますね。レッスンのときから、私たちにも気を遣ってくださって。まだ撮影入る前だったかな? 台本に書かれていないことでも、凄くいろんなことを考えていらっしゃって、「この人はこういうことがあってこうなったからいまはこうなんだと思う」というようなお話を聞いたときは、感動して泣いちゃいました(笑)。

今回は、歌が軸になっているドラマということで、みなさんに音楽に関するお話もうかがっているんです。大島さんにとっての音楽体験や歌に対する思いについて、教えていただけますか?
私の父親が、民謡系ですけど凄く歌が上手い人だったんですね。こぶしが回って…。別にそういう勉強をしていたわけではないとは思うんですけど。東北の村だったので、お嫁さんとかがくると『箪笥長持唄』とかを歌ったりして…。私は、お座りできるようになったころからいつも父親の側にいて、歌を聴いていたんです。もちろん古い歌ばかりなんですけど、たまにそういうのがテレビで流れたりすると、全部歌えちゃう自分がいて(笑)。そういうところから始まって、歌手に憧れていました。勉強はしたことがないので、譜面も読めませんし、どこが『ド』かもわからないので、自分で勝手に始めたりして…。そもそも、キーがあることすら知りませんでしたから(笑)。それで、東京に出てきたとき、初めて偉い先生に歌を聴いていただいたんですけど、子どもなのにクールファイブとかの歌を歌って、全然キーが合ってないから1回でダメでした(笑)。「ハートを勉強してもう1回いらっしゃい」って言われたので、「ハートって何だろう?」って考えているうちに芝居の方にいっちゃったんですよね。だから歌は…劇団にいたのでバイトをしている時代が長かったんですが、バイト先にあったカラオケでお客さんとデュエットすることもありました。アリスとか吉幾三さんの曲を歌ってましたね。それから、舞台の上で歌うこともあったので、舞台で使われるような音楽にハマっていたこともありました。でも、途中で更年期障害になりまして、もちろん仕事はしていたんですけど、それ以外では引きこもりみたいになってしまっていたんです。だから、歌とかも一切聴かなくなってしまったんですね。このドラマが、そこから抜け出して初めてのドラマだったので、私をも救ってくれた作品なのかな、という思いもあって…。戦っている歌とか、諦めるなというメッセージの歌が、自分に言ってくれているような感じがありました。できないから、家に帰っても「う〜ん…」ってうなりながら頑張って練習しているんだけど、そういう自分にも「頑張れ! 頑張れ!」って言ってくれるような感じがして…。いま現在、自分が戦っていることと、とってもだぶるんです。そして、澪さんのセリフも! まるで自分に言ってくれているように感じています。本当に戦っている感じがしています(笑)。

単にドラマの中のお話だけでなく…。
私的にはとってもリアルなんです! でも、ここを頑張れたら、私も抜け出すことができるのかな、って思っているんです。毎回大変で、「できるのかな?」って思いながらもやっています。あまり「できない」とか言いたくないので言わなかったんですけど…。初見はキツイですね。

ドラマを見ていると、歌の持つ力、音楽の持つ力を感じます。
そうですね。私も、最初はできないんですけど、練習して、レコーディングをした後になると、できるようになるんです。最後は「できてんじゃん!」って言われるんですけど、その短い期間の中ではもの凄い葛藤が(笑)。

人知れず、ですね。
そうですね。人知れず、戦ってます(笑)。

だからこそ、伝わってくるものがあるんでしょうね。
そうだと嬉しいです。私自身、聴いたことはあってもスルーしていた時代の曲ですとか、たくさんあるわけです。でも今回歌ってみて、「あ、こういうことを歌っていたんだ!」って初めて知った曲もあって。だからこそ、伝えなければいけない、はっきり歌わなければいけない、と思いますし…。その思いは強くありますね。

こうしてお話をうかがっていると、シャンソンズのメンバーは素敵だな、と改めて思います。
みなさん、本当に素敵ですよ。私はミスキャストかもしれないですけど(笑)。歌を歌っている人って、凄いですよね。福原美穂さんが歌った『フラッシュダンス』で大島優子さんが踊ったときも涙がでそうになって…。泣くシーンじゃないので我慢しましたけど(笑)。

その福原さんも、大島さんに声をかけてもらったお話をされていましたよ。
彼女、気になるんですよ。ドラマ中も、役者じゃないことを気になさっているんだったらと思って、勝手に絡むようにしています(笑)。私は、同じアルトの片瀬那奈さんから音をもらって…。彼女は絶対音感があるらしいので、いつも隣で教えてもらっているんです。私、彼女が歌っているものを録音して持って帰っているんですよ。本当に助かっています!

そういう関係も素敵ですね。天海祐希さんも「シャンソンズのメンバーでカラオケに行こう!」とおっしゃっていますから。是非、実現してください。
レパートリーも増えましたからね(笑)。まだ、みなさん忙しくて…。でも、絶対実現させたいですね。この先、どんどんレベルもアップしていくと思うんですけど、私も頑張ります!

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