Miss PILOT
Interview #7

国木田孝之助役 斎藤工さん

ここまで演じてきて、いかがですか?
撮影序盤にアメリカロケがあったことで、現場に一体感が生まれたように思います。そこで訓練生6人と教官である自分の人間関係も構築できたので、逆に帰国後に撮った物語序盤のシーンでは距離が近くなり過ぎないように気を付けていました。そして、パイロットの訓練課程とドラマの現場は似てるなと感じました。ドラマも個人の力ではなくてキャストとスタッフで共通意識を持って乗り越えないと乗り越えられないものですから。そういう意味ではアメリカロケは非常に意味があったと思います。

アメリカロケで印象に残っていることはありますか?
違いを言葉で表現するのは難しいですが、明らかに空や空気が違いました。撮影をしたノースタゴタは、現地の人でさえ、観光で訪れるような人はいないと言われるような場所なんですが、実際に行ってみると美しい風景が広がっていて。撮影予定じゃないけど「これは撮るしかないでしょ!」というくらいの朝日や空があるんです。その風景も含めて、切り取るべきシーンが多かったです。日本じゃ撮れないであろうあの風景は、見ている人にも映像から感じてもらえると思います。

アメリカロケは大変だったのでは?
大変といえば入り時間の早さですね。朝4時45分入りが数日続きました。ホテルの方に朝食を用意していただいたんですが、日替わりと言われていたメニューはハムとソーセージが入れ替わる程度の違いで、他は基本的に一緒なんです(笑)。それを毎日、まだ日が昇る前の暗闇の中でキャストとスタッフが一緒に食べて。お互いコーヒーをつぎ合ったりしていくうちに自然と距離が近づけられたので、かえって良かったのかもしれません。現地のスタッフチームが合流してくれたこともすごく刺激的でした。

国木田孝之助を演じていて、どのようなことを感じていますか?
僕的に一番意外だったのは、8:2の髪型ですね(笑)。ANAのパイロットには「耳を出さなければならない」というような、清潔感を意識した様々なルールがあり、それに従った結果この髪型になりました。ほかにも、ワイシャツの袖を折っていたらすぐに指摘されて戻したこともありました。とても細かいことまで決められていて、それが人の命を預かっている仕事であることを自覚させられた部分でもあります。コックピットでの撮影もありましたが、これが実際だと何百人という人を乗せて飛ぶんだと思うと気が引き締まりました。役者としてではありますが、これだけ本格的にパイロットとしての仕事を経験させてもらうと、国木田がドラマの中でだけの存在でありたくないなと思うんです。普段、僕をレクチャーしてくださる実際の機長さんはとてもいい方ばかりで、人間性が素晴らしいんです。パイロットは技能的や知性的な部分をクリアすることがゴールに思われがちかもしれませんが、その先にコミュニケーション能力や正直であること、人に愛されることが実はとても大切なんだということがわかりました。それが国木田や、パイロット訓練生たちを通して伝わればいいなと思っています。

斎藤さん自身は教官やパイロットは向いてると思いますか?
僕はむいてないですね(笑)。人に何かを説いたり、導いたり正したりすることは、自分が相当鍛錬を積んでいないと無理ですから。

教官としての国木田をどう思いますか?
僕は、人に対してキツイことを言うのは言われる人より言う人がつらいと思うし、基本厳しさは愛情の裏返しだと思ってるんです。国木田の厳しさは訓練生たちに自分を重ね合わせている、半分自分を見ているような目線からくる厳しさだとも思うので、その深みを出せるよう心がけています。

国木田の訓練生への目線は変わったと思いますか?
最初は"6人"という数で訓練生をとらえていたし、どこか客観的に見ていた部分がありました。でも訓練を経て個々のパーソナルな部分も理解してきたことで、客観と主観のバランスは変化していると思います。あとは訓練がバディ制ということもあり、個人のことだけじゃなく、訓練生同士の関係性を見るようになっていますね。発言してる人だけじゃなくて、その発言を聞いている人の態度や感情を知ることで見えてくる関係性がある。日が当たってる部分じゃなくて、それによってできる影の部分に目を向けることで真実が見えるのかなと。そういう部分にも意識がいくようになりました。

女性がパイロットを目指している、この物語をどう感じていますか?
やはり僕の中でもパイロットは男性というイメージが強かったんです。実際、コックピットの運転席って男性サイズでできていて、そこに女性が座っているだけで違和感があるように見えしまう。でも技術的なものや適性は性別ではわけられないし、なんら変わりはないんですよね。同じようにタクシーやバスの運転手、ドラマの現場の技術職にも圧倒的に女性が増えていて、これまで男性のイメージが強かった職業に女性がいることが当たり前になってきている。今後はもっといろんなことで男性と女性の職業差がなくなっていくのかなと感じていて。そういう意味では、女性でもパイロットになれるんだとわかるこの作品は大きな意味を持っていると思います。

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