名前をなくした女神
インタビュー 第8回
安野英孝役・高橋一生さん
■今回はなかなか強烈なインパクトがある役柄ですね。
強烈ですか?(笑)。
■ホラーっぽく見えなくもないシーンもありましたが…。
そうですね。僕自身は、ちひろ(尾野真千子)に対する歪曲した思いだと思っているんですけど…。なので、僕はそれほど意識してはいないんですけど、そうやって撮ってくださっているから、それが生かされているのかな、と思います。
■今回の現場はどんな印象ですか?
楽しいですよ、凄く。みなさん、仲が良いし。月並みですけど、チームワークは抜群だと思います。最初からとてもいい雰囲気でしたし。ドラマの内容に対する反動もあるのかもしれないですね(笑)。
■英孝というキャラクターを演じるにあたって、特に考えた点はどこですか?
僕が一番気にしている部分は、愛が見えなくならないようにしたい、ということです。英孝のちひろに対する気持ちは、自分の思いが歪んで出てしまっているだけだということを常に意識しています。監督やプロデューサーの方々と最初にお話させてもらったときに、「この人は悲しい人です」という説明もあったので。だから、意図的に何かをしてしまう、というより、結果的にそういうことをしてしまう人、にしたいと思ったんですよね。「これはやり過ぎかな?」っていうことも、常に現場で監督たちと話し合いながら進めている感じですね。
■愛情を上手く表現できないことが、結果的に良くない方向に進んでしまうような歪み方になってしまうんですね。
そうですね。見てくださっている方に、「うわっ、怖っ!!」って思ってもらえるような盛り上がり方は絶対必要だと思うんです。そういう部分に関しては、僕は常に見てくださっている方に委ねているんですけど、それでも僕だけは英孝の味方でありたいんです(笑)。
■名言です!
いや、絶対そうだと思うんです。僕はもの凄い悪役とかも演じてみたいですし、今回の役柄だって最初から最後まで悪役としてやってしまってもいいかもしれないと思うくらい、魅力的な役なんですけど、それでも僕だけは常にその役柄の理解者でありたいと思っているんです。なので、英孝という役も、「わかる、わかる!」って思いながら、本を読んでいるんです。そうしないと、キャラクターの立体感みたいなものが出ないと思うんですよね。ただの悪人、っていう意識でやり始めてしまうと、もう僕も破たんしてしまうと思います。まあ、現場のスタッフや尾野さんは、いつも「怖い!」って言ってますけど(笑)。
■背景が何も見えずに、キャラクターのある一面だけが強調されて終わる、という役柄ももちろんあると思いますが、今回の英孝さんの場合、何故彼がああなってしまったのか、という部分にもとても興味をひかれます。
ありがたいです、そんな風に思っていただけると。僕自身も、そういう意見をいただけるとやりがいにつながりますし。本来だったら、最後まで説明がなくて、ただ怖い亭主・管理してしまう夫、という風に描かれていても、「ああ、きっとこの人には何かあったんだろう…」という風に感じてもらえるように僕自身がやらなければいけないので、そこは頑張りたいと思います。
■それはハードルが高いことなのでは? 特に連続ドラマですと、わかりやすさとか1話毎の盛り上がりが必要ですし…。
逆に、連続ドラマじゃないと出せない布石だったり、伏線だったりを、台本がくる前に監督といろいろ相談しながらやってしまうこともあるので(笑)。それがどういう風に見てもらえるか、というのは楽しみでもあるんです(笑)。
■奥さんのちひろを演じている尾野さんとの共演に関しては?
楽しいです。以前にも共演させていただきましので、お互いに何となく気心も知れていると思いますし、お芝居も相談しながらできますから。僕も好きな女優さんなので、本当に楽しいですね。
■安野家は、視聴者のみなさんから一番心配されているかもしれません。危うい感じなので。
確かに危ういですね(笑)。尾野さんともよく話しているんです。「どうして安野家は均衡を保っていられるのか?」ということを。英孝は大金持ちの御曹司でもなければ、政略結婚したわけでもない。ちひろが家に入っていなければいけない理由…そこには、爽がいるから、というだけでは説明がつかない理由がどこかにあるはずだと思うんです。それは常に意識している部分ですね。
■今回は各家族に子どもたちもいるわけですが、爽くんを演じる長島暉実との共演に関しては?
僕に似ているんですよ(笑)。めちゃめちゃ似てるんです。普段も、爽に会いたくなるんですよね。「子ども欲しい…」とか思っちゃったりして(笑)。僕の小さいころの写真を見ると、本当に似てるんですよ。怖いくらいな感じで。可愛いですね、爽くんは。
■最後は子どもたちみんなの笑顔が見たいですね。
そうですよね。どこかに救いがあるものになったらいいな、と僕も思っています。他の家庭はどうなるのかわからないですけど、安野家って凄く複雑だと思うんです。これが収束して、救いの話になるのであれば、僕の人生にとっても救いになるんじゃないかと思うくらいです。「これだけの家庭が再生できるんだから…」と思うと、いろいろと複雑になりがちな人間関係にも希望が持てるような気がするので。どうか幸せになってほしいです(笑)。
■ドラマの中で描かれているママ友世界に関してはいかがですか?
母親が、僕の弟を幼稚園に行かせていたとき…ママ友の世界がどうだったかはわからないですけど、例えば一緒に迎えにいったりすると、そこはもう異世界なんですよね。「○○くんママ」とか呼んでる感じとか…。ひとつの社会を構成しているけど、男の人たちが働いている社会とは別の社会がそこにあって。それは、女性が作り上げた世界… "見てはいけない世界"のような感じもしていました。だから、役の上でも、お母さんたちが集まったりすると、ちょっと入りづらいような気もします(笑)。
■ドラマのもうひとつの題材である『お受験』に関しては?
最近凄く思うんですけど、結果、その子がどうなるにせよ、塾に行かせたり、習い事をさせたりすることって、その子の根本的な品行に関わると思うんです。その子に品が出てきたり、志みたいなものが生まれるようになっていくと、大人になったときにやっぱり違うと思うんです。何かの線引きをして人を評価するつもりはまったくありませんけど、そういう経験を子どものうちにさせておくことは大事なんじゃないかと。もしかしたらそれは、お受験そのものではなくて、「合格すること」「いい学校に入ること」ということなのかもしれませんけど、僕にとってお受験のイメージは、通過儀礼というか、通らなくちゃいけないところなんじゃないかな、という気がします。
■その一方で、自由に伸び伸び育てたい、という気持ちももちろんよくわかりますしね。
そうなんですよね。僕なんてもの凄かったんです。お受験というか、いろんな習い事をさせられたんで。だから、もっと楽しくやれるような仕組みがあればいいのに、とも思うんです。スパルタな感じというか、子どもが子どもであることを否定するようなイメージもどっかにある感じもしますからね。海外の取り組みとかを見ていても、日本ももっと自由に、型にはめないでやれたらいいのに、と思うこともあります。キーワードっぽくなってしまっているのも良くないのかもしれないですね。『お受験』っていう言葉=子どもらしさを曲げてしまう、というようなイメージがついている部分もあると思うので。
■最後に、視聴者のみなさんに向けてメッセージをお願いします。ドラマはますますどうなっていくのかわからない展開になってきましたが…。
どうなっていくんでしょうね?(笑)。僕もまだ知らないんですけど…。このドラマは、お母さんたちを主軸にとらえた群像劇だと思っているんです。お受験がテーマだったり、ママ友の関係性だったり、という部分ももちろんですけど、夫も含めての群像劇であり、家庭が再生していく話でありたいと思っています。そういうところに焦点を当てて見ていただくと、より楽しめるんじゃないかと思いますので、最後まで応援よろしくお願いします。
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