名前をなくした女神
インタビュー 第2回
安野ちひろ役・尾野真千子さん
■まず、台本を読んだときの印象からお願いします。
最初に考えたのは、「これが現実なのかな?」ということです。台本を読むと、「ちょっとやり過ぎなんじゃないのかな?」と思うこともありましたが、必ずしもそれは作られたものではなく…。こういうことは伝えていかなきゃいけないものだと思うんです。いろいろ伝える方法はありますけど、私たちはこうやって発信していくしかないので。
■ドラマですからママ友同士の軋轢・トラブルなどの描き方も多少はデフォルメされていますが、現実にはもっとさまざまなことが起きていたりもするわけで…。
そうらしいですね。描かれているのは、ドラマでできる範囲というか…。きっと、もっと苦労している方もいらっしゃるでしょうし、もっと大変なこともあるんじゃないかと思います。
■今回のちひろというキャラクターを演じるにあたって、制作サイドから何かリクエストはありましたか?
「複雑な役で大変だろうけど、よろしくお願いします」と言われました(笑)。
■ちひろさんは育った背景の設定も複雑ですし、高橋一生さん演じる夫の英孝に対してだけでなく、杏さんが演じる侑子に対してもいろいろな思いを抱えていたりしているので難しい役柄なのでは?
愛情の裏返し、ですよね。夫との関係にしても、愛しているけどそれを上手く表現できないというか。愛していないわけじゃないけど、伝え方が間違っている…ただそれだけの、ちょっとしたことなんですけど、それが家族を違う方向に向かわせてしまっているような感じだと思います。
■ちひろさんは、女であり、妻であり、母であるわけですけど、演じる上で特に意識している点は?
楽しみではあったんです。いろいろな表現ができるという意味では、役者としてとてもやりがいがありますから。実際のことを考えちゃうと、大変そうだな、とは思いますけど。でも、私はこの役をいただいて嬉しかったですね。いままでと違ったものが伝えられそうだな、と。
■ママ友、という関係性もなかなか特殊ではあります。
ママ友ね(笑)。いろんな人から話を聞いてみると、良くもあり悪くもあり…という感じがします。友だちを作るひとつの手段ではあると思うんです。そこに、お受験みたいなことがあると、また変わってくると思いますし。
■その『お受験』に関して、尾野さんはどういうイメージを持っていますか?
私は羨ましいです。私はお受験を経験したことがなく、受験といえば高校受験だったりするので、ある意味それを受けられる環境にある人たちはいいな、といまは思います。いいところに行かせようという思い、将来苦労しないようにさせてあげたいという親の思いがあるわけですからね。私もお受験を経験していたら、人生が違ったのかな? まあ、私は私で、いま幸せなんですけどね(笑)。だけど、お受験ができる、ということはやっぱり羨ましいですね。
■ママ友となる侑子役の杏さんやレイナ役の木村佳乃さんたちと共演されてみていかがでしたか?
楽しいです(笑)。現場はとても和気あいあいとした雰囲気なんです。みなさん、とても気さくな方たちばかりで、ナチュラルに接してくれますから。撮影の合間に、わざとそれぞれが役になりきって普段の会話をしてみたりしてますね(笑)。
■子どもたちもたくさん出演しますから、現場的には大変なことも多いはずですが、その分、楽しいこともたくさんある現場でもあるような気がします。
そうなんですよね。私も、大変だろうなとは思っていましたけど、子どもたちが和ませてくれるんです。だから私たちも、ついつい子どもたちを目で追ってしまったりして、母親の気持ちを疑似体験しているような気分なんです。「ああ、これが母性なのかな…」って。子どもたちがいないときは自分に戻るんですけど、それって実際のお母さんたちもそうなんじゃないのかな、と思うんです。子どもを預けている間が女でいられる時間、というか。私たちも…まあ、あくまでも役柄の上での子どもですけど…子どもと離れているときは女として役を演じていて、子どもがいれは自然と母親として演じているような感覚なんです。
■最後に、視聴者のみなさんに向けて、メッセージをお願いできますか?
『お受験』というテーマはありますが、同い年の子を持つ5つの家族が描かれるドラマなので、そこにはそれぞれの家族なりの事情があり、子育てがあり、愛情があるんです。だから、「もしかしたら自分の育て方、愛し方が間違っているんじゃないかな?」と思っている人がいるとしたら、それもひとつの愛し方なんだよ、ということを伝えていけたらいいなと思っているんです。人は、「あの人はこうしているから、私もやった方がいいのかな?」っていう風に、他人を見て自分の間違いを探してしまうところがあると思うんですけど、そうではなくて、いろいろな愛し方があっていいんだよ、ということを伝えていければいいなと…。このドラマも、最終的に何かひとつの答えを出すのではなく、それぞれの家族がママ友との関係やお受験を通して、生き方を見つけていくお話だと思いますので、みなさんにとっても、このドラマが家族のことについて考えたり、忘れかけていたことを見つめ直したりするきっかけになれば嬉しいです。
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