わたしたちの教科書
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Q.瀬里直之に関しては、特に珠子との関係性において、単純に、元恋人であり、裁判では敵同士、という以上のものを感じたのですが…。

まあ、いざとなったらどうなったかわからないですけどね。実際、そういうところは描かれなかったですけど、余裕がなくなったときに何をするかわからないような側面は持っている人じゃないかな、とは思うんですね。彼の中の正義というのは、主観的な正義ではなく、客観的な正義なのではないか、と思っていたんです。法律的な、もしくは常識的なというか…。いまの日本において、形作られているルールみたいなことが、彼の中の一番の規範になっていると思うんです。その行動規範を守っているうちは、絶対に自分自身が根底から揺らぐようなことはないという自信があるんですけど、世の中、何が起こるかわかりませんから、例えばクライサー法律事務所が倒産してしまったとか、完全な悪だとわかっているクライアントを引き受けなければいけない状況になり、それが自分の社会正義みたいなことに反しているとか、そういうギリギリの状況に置かれたときにどうなったか…。逆に、そういう大げさなことではなく、もっと細かな…彼の逆鱗に触れるようなキーワードのようなものがあるのかな、とか、いろんなことを考えていましたね。多分、『公』と『私』というものを、無意識のうちに完全に別物ととらえるような人だと思うんですよね。『私』の部分では、珠子のことが好きで、多分いまでも思いはあると思います。ただ、『公』の部分で、こうやって仕事上でぶつかったりしたときは、『私』の感情がなかったことのように振舞うこともできる人だと思います。もし本当に、もっとウエットな、情が表に出てくるような人であれば、珠子とこういう形で係争することはできなかったんじゃないでしょうか。

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