山田太一ドラマスペシャル
『星ひとつの夜』
- インタビュー -

Q.このドラマを通して伝えたかったことを教えてください。

今の時代は近代主義、人間主義で、努力すれば何でもできる、技術が進歩して何でもできるという風に考えられがちですが、それは浅薄な考えだと思います。現実はいくら努力してもうまくいかないことが多く、自分ではどうにもできないことに直面した人物・・・心の芯に沈黙がある人をドラマで描くことが大事なのではないかと思いました。ただ、寡黙な人ではなく、会っていると、心の芯に沈黙があるなという人を。壁や壊せない現実を体験した人は、心の芯に沈黙があると思うのですが、そんな人を演じられるのは渡辺謙さんしかいないと思いました。ご病気をされたというのもあるのかもしれませんね。
お金があれば何でもできると言った人がいましたが、お金は使う人の器量が求められます。器量が見合わないとお金を使いこなせず、壊れてしまう人もいます。お金は自分の幸福の分だけあればいい。お金がいっぱいあると減るのが怖くなってしまうのです。
(玉木宏さん演じる)大樹は心の中におびえを持っているのですが、助言をくれる人がいませんでした。(渡辺謙さん演じる)野々山は、そんな大樹がお金を落として、お礼に半分あげると言ったのに怒って返します。野々山が、「もしかしたら、助けを求めているの?」と大樹に聞くシーンがあります。現実にはあまりないかもしれませんが、両者は特別な孤独を抱えていて、そして次第に心を寄せ合っていきます。
今、ドラマの方法論が固定化されていると思います。どのドラマもテンポが似ていて、ギャグが入っています。ドラマは幅がないといけないと思い、2時間ドラマでそれを提示したいと思いました。今、ドラマは子供でも分かるようにわかりやすくという脅迫観念があるんだと思います。いしだあゆみさんも長いシーンが短く感じたとおっしゃってくれました。充実していると短く感じるんだと思います。

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