風のガーデン
宮本監督の編集後記
Vol.9

9話の注目は、なんといっても貞美と貞三の7年ぶりの再会と会話のシーンです。再会シーンで中井さんが見せた、怯えが混じった気の弱そうな表情は本当に素晴らしかった。実は撮影よりも前に、中井さんが「親父役としての緒形さんと、役者の大先輩としての緒形さんがだぶって見えることある。決して言葉には出さないけれど"役者のあり方"みたいなものを、演技を通して見せてくれてるような気がして、だから緒形さんを見ているといろいろ感じることがあるんです」と話していたことがあったんです。そういう中井さんの気持ちが、貞三を目の前にして怖がったり、泣いてしまったりする貞美の芝居にそのまま反映されていたような気がします。その後の会話のシーンで、こわばりがほどけていく感じもまた2人の関係に通ずるものがあるように見えました。

その会話シーンが、これまた素晴らしい。以前にも話した"ぶっつけ本番"をお願いしたシーンの1つです(*Vol.3参照)。今回は野外での撮影。カメラは4台用意しましたが、ぶっつけ本番だとカメラアングルに制限が出てしまうこともありかなり迷いましたが、それよりも中井さんと緒形さんが"7年ぶりに会話する親子"を演じる最初の瞬間をおさめたい気持ちが強く、お願いすることにしました。長いシーンだったので、緒形さんはたくさんのセリフを覚えるのに悶絶してましたね(笑)。いざ撮影になると、お2人はもちろんスタッフも前回以上に緊張しました。私もモニターを見ながらクラクラしていたし、終わった時はその場にいた全員がぐったりしましたから(笑)。これまで、私の中では中井さんは芝居をきっちりと決めてから現場に入る役者さんというイメージがあったんですが、「風のガーデン」では"自分でも現場に入るまでどうなるのかわからない"というところで勝負しているような気がしていて。それが感じられたシーンでもありました。このシーンの撮影後、ぐったりしながらも「とてもいい時間を過ごすことができました」と、笑顔で帰っていかれたのがとても印象に残っています。

なんともいえず悲しく、そして温かい2人の会話。渾身のシーンです。

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