風のガーデン
宮本監督の編集後記
Vol.8
この作品では台本や撮影中に何度となく泣かされている私ですが(笑)、台本で一番泣かされたのが8話。貞美に内緒で、富良野の仲間たちが久しぶりの再会を喜び"生前葬"(*本人が生きているうちに葬儀を行うこと)という形で歓迎会を開きます。この意表をつく発想は、やはり倉本脚本ならでは。まず、生前葬というだけで貞美が仲間からどう思われていたかがわかる。よほど絆の深い仲間じゃないとできないことだし、貞美の年齢になっても一緒にバカをやれる仲間がいるということは素敵なことですよね。生前葬のシーンでは、仲間1人1人が弔詞で貞美との思い出を述べていくんですが、これがまた素晴らしい。泣き笑いが詰まってます。みんなが貞美の過去の悪行をバラしてどれだけひどい奴なのかを訴えながらも、そこには友情や愛が感じられるんです。そんな暴露話に貞美も仲間たちも笑いころげるわけですが、自分の人生を情けないと思っている貞美は笑いながらも涙が出てきてしまう。その姿はなんともいえないおかしさと切なさがあります。
このシーンで頑張ってくれたのは助監督。映像では次々と弔詞が紹介されるので、台本にはセリフの後半が省略されているものがあるんです。撮影ではそこでぷっつりと切るわけではないので続きのセリフが必要になるんですが、それを考えたのが助監督でした。OAでは使われないけれど続きのセリフを一生懸命に考えてくれました。それが意外におもしろくて、撮影ではちょっと長回しをしたりしました(笑)。
生前葬のシーンでは、貞美が故郷の仲間たちにどれだけ愛されていたことを感じてもらえれば嬉しいです。
そして、8話の最後に貞三さんがキャンピングカーに出向くシーンがあります。そこで貞三は貞美のレントゲン写真を見てすべてを把握するんですが、その時の緒形さんの息遣いはすごい迫力です。静寂な中で、どんどん荒くなる緒形さんの息遣いはモニターで見ていてもドキッとするほど。カットがかかったと同時にスタッフ全員が「はぁ〜」って息を吐きましたから。つまり、無意識にみんなが息を止めてしまっていたんです。それくらいの緊迫感と迫力のあるシーンになっています。
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