風のガーデン
宮本監督の編集後記
Vol.7

6話の最後で偶然にも顔を合わせてしまった貞美とルイですが、7話ではきちんと再会することになります。当然ルイは貞美が父親であることも、なぜ一緒に暮らせないでいるのかも知っているから、その思いは複雑なわけです。それがよく出ているのが、貞美に「お父さんをまだ恨んでいるか?」と問われた時。ルイ的には恨めしい気持ちがあるけれど、でもやっぱり会いたかった気持ちもある。そんな複雑な感情が入り混じった、微妙で難しい表情を黒木さんがよく表現してくれました。黒木さんとは「拝啓、父上様」以来の仕事でしたが、この1年間で驚くほど急成長していて、感じたことをそのまますーっと表現できるいい女優さんだなと感じました。それに加え、普段の中井さんと黒木さんの関係もあって成立したシーンだと思います。2人は撮影以外でも本当の親子みたいでしたから。役作りということもあったかもしれませんが、中井さんは黒木さんや神木くんを我が子のように、黒木さんや神木くんも中井さんを父親のように接していて、いつも"家族"でいてくれました。特に中井さんは、本人たちがいないところでも2人を褒めていて、その姿は微笑ましいというか、ほとんど親ばか状態でした(笑)。

もう1つ、とても印象的だったのは三沢家の看取りのシーン。三沢家は貞三が往診しているうちの1つで物語の中では少ししか登場していないんですが、本当に素敵な家族なんです。役者さんたちは撮影の数日前に顔を合わせたばかりなのに現場以外でも一緒に過ごしていたせいか、撮影に入った時にはすっかり家族になっていた。そんな家族がそろっておじいちゃんを看取る。もうリハーサルではスタッフ全員が大号泣でした。見ていた人それぞれが、自分の近しい人が亡くなった時のことを思い出したり想像したりしてしまったんだと思います。貞三が言っていた、自宅で家族に見守られながら息を引き取ることの意味を目の当たりにした気持ちでした。こういう風に家族全員が死を受け止めるプロセスを訓練して、きちんと向き合えることは、亡くなる人はもちろんですが残される家族にとっても悔いが少ないような気がします。それを実感させられるシーンですね。

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