風のガーデン
宮本監督の編集後記
Vol.3

今でも思い出すだけで手に汗をかいてしまいそうなくらい、とても緊張したシーンがあります。物語中盤に出てくる、貞美の7年前の回想シーン。それは、正真正銘"ぶっつけ本番"で行いました。"ぶっつけ本番"というのは、本来なら何度か行うリハーサルを行わずいきなり本番をやることで、私も長い間ドラマに携わっていて、やってみたいけどやれなかったことでした。当然のことながら、リハーサルは役者さんにとっても我々スタッフにとっても大事な工程で、それによって役者さんの動きが決まり、カメラやマイクの位置も決まるわけです。役者さんだって相手の出方や動きを知ることで、本番までに自分の芝居を微調整できるし、ともかくリハーサルをやらない撮影は無謀とも言えます。それでもやりたいと思っていたのは、実は役者さんが最初の行う芝居が一番感情が入っていていいことがあるからなんです。特に感情がぶつかり合うシーンなどでは、そういうことがよくあるんです。何度もリハーサルを行うことで"収まりのいいシーン"にはなるけど、何か物足りなさを感じてしまう。もちろん全部それでやるわけにもいかないので、今回は全ストーリーの中で選びに選び抜いた2箇所で行うことにしました。その内の1つです。

今回、回想とはいえ貞美と貞三が初めて対峙するシーンだったし、2人の最初のぶつかりを見てみたくて中井さんと緒形さんに相談したところ、中井さんは「受けて立ちましょう」、緒形さんも「おもしろいじゃない」と言ってくださり実現することになりました。撮影前の現場は異常な緊張に包まれていましたね。なにせ中井さんと緒形さんがどう動くのかがわからないので、私もカメラも音声も照明もスイッチャーも…とにかく全セクションがどうするのが正解かがわからない。そんな中、お二人がスタジオに入ってきて最初の立ち位置にスタンバイ。そして、本番…。すごく緊迫したいいシーンが残せたと思います。全員が緊張しながらもどこかそれを楽しめた、そんな貴重な経験をさせていただきました。ぜひ、じっくりとご覧ください。

貞美と二神のシーンもとても迫力があります。すごいなと思ったのが、1度撮った後に中井さんから「ちょっと別のパターンでもやってみたい」という提案があって。もう1度やってみたら、中井さんの芝居を受けて奥田さんの芝居もガラっと変わった。ベテランの役者さんにとっては当たり前なのかもしれないんですが、それがとてもいい感じにハマっていたんです。貞美と二神がぶつかり合いながも、共鳴しているのが伝わってきました。これまで何の繋がりもなかった2人の心が近くなっていく感じがしましたね。

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