風のガーデン
宮本監督の編集後記
Vol.0

連続ドラマを全話1人で撮ること。おそらく連続ドラマを担当する演出家なら誰もがやりたいと思うのではないでしょうか。演出家にはそれぞれのこだわりや色があって、ある程度は統一できても完全に一緒ということはありえない。当然、演出家によって役者さんやスタッフに要求することは違ってくるわけで、良くも悪くも同じ作品でありながら話数によってバラつきが出てくる。それが、演出家が1人だと最初から最後まで一貫して同じスタンスが保てる。それは、役者さんやスタッフにとってもやりやすい現場だと思います。ただ、撮影と放送がほぼ同時進行で行われる連続ドラマでは、それは現実的に不可能だから通常は2〜3人で分担して行われるんです。今回、「風のガーデン」は撮影時期が放送よりかなり前であることから、やってやれないことはないなと思い挑戦させてもらいました。もちろん、そのぶん責任は重大だけれど、その責任の重さをバネに楽しんでいました(笑)。

「風のガーデン」を演出するうえで大切にしていたのは"余計な演出をしない"でした。脚本はもちろんですが、役者さんもスタッフも素晴らしい方がそろっていたので、制作側の作為が見えるような演出はしたくないなと。役者さんにはなるべく自然に動いていただいて、それにカメラが合わせるといった演出を心がけてました。演技に関しては申し分のない役者さんがそろっていたので心配はありませんでしたが、一方で心配の種となっていたのは自然。ガーデンをはじめとする富良野の大自然はこの作品のみどころの1つであり、物語の重要な要素。昨年のデータを参考に花の種類と咲く時期を考慮して撮影スケジュールが組んでいたのですが、異常気象のせいで予定していた時期に花が咲かなかったり、逆に早く咲き過ぎて枯れてしまったりとものの見事に崩されました。ある程度は予測していたものの、その度に倉本先生に写真を送って、急遽花言葉を作成してもらい、それを神木くんがすぐに覚えて本番、という過酷な状況に何度も遭遇しましたね。自然相手の大変さを痛感しました…。もっとも、一番痛感していたのは神木くんかもしれませんけど(笑)。

9月末、すべての撮影を終えて真っ先に浮かんだのは感謝の気持ちでした。約5ヶ月に渡った撮影中はキャストとスタッフが垣根なく、同じ思いを持って生き抜いてこられたことに、ただただ感謝です。大変ではあったけれど、それ以上に楽しい素敵な現場でした。これから、その素敵な映像をみなさんに届けます。画面の中で生きる、そして画面に映っていないところでもまるで本当に存在しているかのように感じられる貞美を、貞三を、ルイを、岳の姿をぜひご覧ください。

もどる
スペシャル TOP
0.風のガーデン TOP

(C)フジテレビジョン