interview #08
西脇アカネ役 中谷美紀さん
撮影はもう終盤に突入しました。今回の現場はいかがでしたか?
芦田愛菜ちゃんに引っ張られた3ヵ月でした。彼女は、役柄を全うすることもさることながら、現場を率いていくリーダーとしても頼もしいので、皆が愛菜ちゃんについて行く現場だったんじゃないかな、と思います。いつも周囲に気を配っていて、スタッフのこともキャストのことも大切にしてくれていることが伝わるんです。目上の人を敬う気持ちも持ちつつ、ちゃんとやるべきことはしっかりやる、という感じで。きっとご両親の教育がいいんでしょうね。
中谷さんは、撮影の合間も愛菜ちゃんと一緒にいて、よくお話もされていていましたよね。それは、中谷さんが意識してそう接したからなのでしょうか。それとも、自然とそうなったという感じでしょうか。
意識して話しかける必要はありませんでした。本来だったら、彼女は覚えることもたくさんありますし、やるべきこと…例えば、夏休みの宿題ですとか、お仕事以外にもやるべきことがたくさんあるはずなんです。ですから、あまり邪魔はしたくないなと思ってはいたんですけど、彼女はやるべきことをちゃんとやりつつ、遊ぶゆとりもあるというか。ですから、そういうときに私が遊んでいただいた、という感じです。
中谷さんが遊んでもらっていた、と?
はい(笑)。愛菜ちゃんからは多くを教わりました。愛菜ちゃんは、甘え上手ですし、質問上手ですし、コミュニケーション能力がとても高いんだと思います。人の心をよく分かっているんですよね。
今回のアカネさんというキャラクターですが、演じるにあたって、特に意識されていたことは?
蟹江敬三さん演じる富美夫さん、丘みつ子さん演じる千恵子さんをはじめとする中村産業の面々と、愛菜ちゃん演じる美雨ちゃんの中間に位置しているキャラクターだと思うんです。そういう意味では、どこにも属していないんですけど、両者の間をつなぐジョイントみたいな存在になれればいいな、と思いながら演じていました。
皆が圭介(豊川悦司)さんと美雨ちゃんの親子を見守ってきたドラマですが、それぞれ年齢も立場も考え方も違うので、そこにはいろいろな視点があったと思います。それがそのまま、ドラマを見てくれている視聴者のみなさんの視点でもあったような気がします。
そうかもしれないですね。そういう意味では、視聴者のみなさんに一番近い目線というか。心配はしつつ、かといって無責任なことも言えないという中で、感情だけで「一緒に暮らした方がいい」とか何とか言うのではなく、「現実はこうでしょ?」と指摘するような役割というか…。ご覧いただいたとおり、中村産業の人たちは温かい人たちばかりですけど、実際の俳優さんたちも本当に温かい方たちなんです。丘さんしかり、蟹江さんしかり、でんでんさんしかり、秋生を演じている(三浦)翔平さんしかり、皆さん、俳優であること以前に、ひとりの人として魅力的な方ばかりなんです。そんな皆さんの織りなす温かくて優しいハーモニーに、現実をシビアに見ているアカネというスパイスが加わった、という感じかもしれません。
圭さんが美雨の将来を考えて出した決断は"正しい"わけですが…。
そうかもしれないですね。ただ、今後のことを思うと、難しいな、とも思うんですけど…。いままで圭さんは、労働の対価としてお給料をいただき、中村産業の敷地内にある寮みたいな部屋で暮らしてきたわけですけど、労働力を提供できなくなった圭さんはあそこに住み続けることができるのか、とか、いろいろなことを考えてしまうんです。でも、あの中村産業の人たちが一緒だったら、綺麗ごとじゃなくて、ともに歩んでいけるんじゃないかな、と私自身も思い始めています。
正しい結論はベストな結論であるべきなんでしょうが、正しいからといって、実はそれがベストだとは限らない、というところが難しいですね。終盤はそういう部分が描かれていくわけで、その中でアカネさんが果たす役割もあり…。
アカネは、最初は「ふたりは別れて暮らすべきだ」ということをひとりで主張してきましたけど、結局、人間って理屈とか正論だけでは生きていけないというか…。そこはやはり、人の心あってのものなんだと思います。何よりも、美雨ちゃん自身の思いが一番大事なわけですしね。そういうことを考えていく中で、アカネも成長していくんだと思います。圭さんとあの幼い美雨ちゃんに、アカネも成長させてもらったんじゃないかな、って。
豊川さんとの共演に関してはいかがですか?
本当に圭さんという役にぴったりだと思います。最初は、作業着姿の豊川さんに違和感もあったのですが(笑)、もう圭さんにしか見えないです。
愛菜ちゃんが「もう父ちゃんにしか見えない」と言っていたように…。
言っていました?ふたりは、本物の親子のようです。あの口数の少ない豊川さんが、愛菜ちゃんと一緒のときはよくお話しされているんです。愛菜ちゃんが可愛くて仕方ないみたいで、見ているだけで本当に微笑ましいです。
現場の空気感というのは、画面から伝わる気がします。豊川さんと愛菜ちゃんや、先ほどのお話にもあった中村産業の温かい感じは、まさに現場の空気そのままですよね。
中村産業は丘さんが皆をまとめてくださっているんです。やはり、女性は強いな、と思います。丘さんご自身の生き方も本当に素敵で…。女優でありながら、陶芸作家さんでもいらしたりとか、書の個展をなさったりとか、いわゆるみなさんが想像するようなセレブな女優の姿ではなく、土と戯れ、自然と戯れる暮らしをしていらっしゃる。それが本当に魅力的で、とにかく丘さんのお話を聞いていたい、という感じなんです。そこに、蟹江さんやでんでんさんの昔懐かしいお話などもあって、現場はとにかく話題に事欠かないんですよ(笑)。
最後に、ドラマを応援してくれている視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
ラストがどうなるのか、私自身もまだ知らないんですけど…。何でもメールだけで済んでしまうというか、特に都会で暮らしていると、人とあまり関わらなくても生きていけるような世の中ですけど、あの震災の後に日本人の誰もが感じたように、人と人が支え合って生きていくことは素敵だな、カッコ悪くてもいいから一生懸命生きている人って美しいな、っていうことを、この作品を通じて感じくれたら嬉しいですし、懸命に生きる圭さんと美雨ちゃんの健気な姿を最後まで一緒に見守っていただきたいです。
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