山田太一の『ありふれた奇跡』
第4回「『ありふれた奇跡』構想」
(2009/01/16)

これは"死のうとしたことがある人"の物語です。一般的にそんな経験のある人はマイナスのイメージを持たれてしまいがちですが、僕はマイナスを抱えている人は、それだけ人の苦しみに対する感度がいいと思うんです。だから、元気いっぱいではなく何かしらマイナスを抱えている人たちに魅力を感じたのです。

物語は、それまでまったく面識のない男女が1人の死のうとしている男性を助けるところから始まります。普通、"これから死のうとしている人"なんて見ているだけではなかなかわからないし、異変に気づいたとしても「あれ?」と思うくらいで助けることはない。でも、この男女はそれを敏感に察知し、助けようとします。それは2人がマイナスを背負っている人間だったからです。

同じようにマイナスを抱えている3人ですが、2人の男女と1人の男には大きな違いがあります。2人は死のうとしたけど、結局は死ななかった。つまり、生きようとした。その事実が、どういう形で周りの人を巻き込んで、ラストシーンまでいくのか。楽しみにしていてください。

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