重い沈黙が雪のように降りしきる…。
「ごめん…実は…」
「ん?な、なに?」
「実は他の人にも今プロポーズされているの…」
―!!!!!!
僕はなにがなんだかわからなかった。A子の言葉の意味を理解したくなかった。
しかし嫌でもその言葉は振動した空気が僕の鼓膜を震わせ、鼓膜の振動が脳に伝わり、伝わった信号を脳が言葉として認識してしまった。
この時僕はどんな表情でA子を見ていたのだろう…。お願いだ。冗談だと言ってほしい。頼むっ。
「今の会社の部長(45)なんだけど、その人私に本気らしいの…」
―ガ〜ン!!!
僕の願いは届かず「これが現実だ!」と言わんばかりにA子は淡々と語り始めた。
「その人結婚してたんだけど半年前奥さんと別れたの。そんな時私がちょうど入社して相談聞いてるうちに私もちょっと気になるようになってきて…。年上の人ってなんか頼れるし、大人だし、でも甘えさせてあげたくなっちゃうんだよね。」
僕は呆然とした。なにか僕の中で緊張の糸が切れ始めた。
「なぜなんだい!A子!そりゃないぜっ」
「そんなおっさん、いかがわしいったらありゃしないぜっ」
「カムバック!A子!」
僕はA子を攻め立て捲くし立てた。
「だって、その人はガッついてくるような、そんな子供っぽくないしね。」
「女性から見たら男なんてみんな子供っぽいじゃないかっ!」
「高級日本料理屋に行った時もなんでも食べていいってご馳走してくれるんだよ!」
「そんなのだまされてるぜ!後でふすま開けたらふとんが敷いてあるに決まってるぜっ」
「やさしくてなんでもしてくれるんだもん!じゃあね、まったね〜」
「A子ぉぉぉぉ!!!!!」
「いかないでくれぇぇぇぇ!!!!A子ぉぉぉぉおっ!!…」
ドバァァァ!!
「ハァ、ハァ…ん?」
僕は汗びっしょりになっていた。
毎晩こんな夢を見る…。
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