#125 スタッフからのメッセージ
■フランスで有名な作家にアルフォンス・ドーデという人物がいます。彼は「風車小屋便り1869/Lettres de mon Moulin in 1869」という本の中の一節で「ゴーシェ神父の養命酒」という短編を書いていました。もともと牛飼いの仕事をしながら修道院で働いていた主人公・ゴーシェは、ある時、育ての親である母親から受け継いだ薬草の見分け方をヒントに養命酒作りを発案。修道院の中で自ら養命酒を作り上げると、それまで財政苦に陥っていた修道院を助け、その功績で神父にまでなってしまったという話です。
実は、この物語「ゴーシェ神父の養命酒」のモデルになったのが、今回取材したサン・ミッシェル大修道院で実際に働いていたカリックス修道士と、彼が作ったお酒「リキュール・ドゥ・プレモントレ」だったのです。
様々な巡礼者が立ち寄る修道院では、昔から、修道士自ら蜂蜜やチーズ、シロップなどを作り、それを売っては、修道院の財政を助けていたそうです。そして、様々なものが作られる中、1858年に誕生したのが、100種類以上の薬草とアルコールを混ぜ、蒸留して作られる「リキュール・ドゥ・プレモントレ」でした。カリックス修道士は、蒸留したお酒に、更に蜂蜜やサフラン、水を加えて飲み心地をまろやかにし、この修道院秘伝のリキュールを作り上げたのです。当時、彼は、そのリキュールを売るだけではなく、修道院に訪れた貧しい人達に、そのお酒を振舞い、少しだけ彼らの苦しい生活を忘れさせてあげたそうです。ドーデは物語の中で、この養命酒の事を「金色を帯びた、温かそうな、光り輝く、えもいえない緑のリキュール酒」と表現していますが、恐らく、そんな表現をした根底には、当時、このリキュールのお陰で様々な救いを授かった貧しき人々のり気持ちが込められていたからではないかと思います。
残念ながら、その後、修道院の生活が再び困窮したことでリキュールの製造権が売られてしまい、現在、この土地でリキュール作りは行われていません。しかし、そのレシピは、他の場所に移っても受け継がれ、昔のままの味で「リキュール・ドゥ・プレモントレ」は作り続けられていました。
[0]もどる
(C)フジテレビジョン