#124 スタッフからのメッセージ

■オリーブの収穫といえば、ヨーロッパの地中海気候に恵まれた土地では冬の風物詩。年末から新年にかけて、オリーブの産地なら何処へいっても、熟した実を収穫し、それを絞って1年分のオリーブオイルを作る…そんな風景が見られます。今回、取材したヴォー・ド・プロヴァンス周辺の町も、その例に漏れず、たくさんのオリーブの木が生い茂り、この時期はオリーブの収穫で忙しい毎日を送っているそうです。ただ、ひとつ違うのは、その忙しい時期を迎える前に「オリーブ・カッセ」を作るという、他の場所にはない楽しみがある事です。
「オリーブ・カッセ」とは、簡単に言うと「オリーブの塩漬け」。日本風に言ってしまえば「オリーブの浅漬け」もしくは「オリーブのお新香」といった所でしょうか。口の中に放り込んで噛むと、コリコリッとしていて、その塩味がお酒のつまみとしても良く合う…そんな食べ物です。これは、もともと、「オリーブ・カッセ」が今のように多くの人に知られる前までは、農家の人達が、まだ実の堅い熟す前のオリーブを早摘みし、ビール瓶などの底でオリーブの実を割り、塩漬けにして食べていた、地元の人だけが知る、ごくごく家庭的な「おつまみ」だったんだそうです。その味は、この地方でよく飲まれる食前酒・パスティス酒に良くあって、収穫の忙しい時期を迎える前のお楽しみでもありました。ところが、それがカフェなどの「おつまみ」としても登場するようになると、だんだんと人に知れ渡り、今では工場でも生産され、マルセイユ辺りにまで出荷されるようになったのです。まあ、それにしても、この「オリーブ・カッセ」を食べられるのは、プロヴァンス地方の中のこと。この土地の味という事には変わりはありません。
実は、今回、この番組で「オリーブ・カッセ」を取り上げたのは、番組のコーディネーターが、以前、この地方で仕事をした時に食べ、それが美味しかったのを忘れられずに、また、この地方を取材するんだったら「オリーブ・カッセ」を取材しようと実現させたものでした。フランスの朝市などに出かけると、よくオリーブのオイル浸けのようなものを売っていて、たまに口にすることがあるんですが、実は、それを食べた感想は「嫌いじゃないけど、そんなにたくさんは食べられないな…」というのが実感でした。そんな訳で、今回も同じように思いながらも実際に口にしてみると「おっ、これは前に食べたのと違う食感」と思いつつ、ついつい後を引いて、気が付くとオリーブの実を次から次へと口に運んでいました。これは、何を隠そう、「オリーブ・カッセ」の説明で最初に書いたように「オリーブの浅漬け」「オリーブのお新香」的な味わいが気に入ったからに違いありません。まさに、オリーブ畑の農家で生まれたという味わいの「オリーブ・カッセ」。そして、以前から、このオリーブを気に入っていたコーディネーターは、工場の売店でしっかりと買って帰った事は言うまでもありません。

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