#122 スタッフからのメッセージ

■以前、ロレーヌ地方でも農場で経営している「Auberge/オーベルジュ」を紹介したことがありますが、フランス各地にある「Auberge」を訪ねる楽しみは、その土地の特色を生かした郷土料理を、その店の家庭の味として味わえる事にあるのではないかと思います。つまり、キチンとしたレストランで綺麗に盛り付けられた料理を食べるのではなく、自宅のキッチンにいるような親しみやすい環境で、その土地の母親の味を味わいたい人には、「Auberge」は最適な場所だという事です。
今回取材したモラールさん御夫婦が始めた民宿も、まさに、そんな暖かい家庭の味が楽しめる、郷土色豊かな場所でした。御主人曰く「農場オーベルジュと名乗るからには、料理に使う食材の60%以上は、自分達で栽培し育てたもので食事を作らなければならない」とのこと。この御夫婦二人は、民宿やレストランの仕事ばかりではなく、忙しく畑や家畜の世話をしながら、訪れる人達に満足してもらえる料理を毎日作ってきたのです。料理をしている様子を見ていて、「なるほど、これが農場オーベルジュの特徴なのか…」と改めて思ったのは、奥さんが「もうちょっとハーブが欲しい」とか「サラダにトマトを入れた方が綺麗に見える」なんて言うと、ご主人が「それなら…」と、いそいそと畑にハーブやトマトを採りに出て行く姿でした。まさに採れ立て、キッチンのすぐ傍で、まだ畑で実っている食材を、即座に料理に使えるのですからこれほど新鮮なものはありません。毎日作るメニューにしても、「今、畑で○○が実っているから、今夜は○○を作ってみよう」と、日々、工夫を凝らしながら生まれているのです。そして、そのベースには、奥さんが小さな頃から作り、食べてきたプロヴァンス料理の基礎が詰まっています。更には、番組の中でも紹介したように、この家は子供の頃から御主人が遊びに来ていた場所。おじいちゃんとの思い出と共に、この土地に対する愛情が料理にも加わって、民宿の料理をより暖かなものに感じさせてくれるのです。
打ち合わせの時、ある雑誌を見せられて始めて知ったのですが、このプロヴァンスの田舎町にある民宿に、すでに日本の取材が訪れていました。そして、その記事を読んだとある日本人が、フランス語も話せないまま、この宿に泊まりに来たそうです。始めは、それを聞いて「どうやって、この宿を知ったんだろう?」「フランス語が話せないのに、どうやって、ここまで来たのだろう?」と思いましたが、この御夫婦の人柄を知り、この宿で出される料理の味を知り、そして、この宿周辺の自然などを知ってみると、やはり、皆、求めるものは同じなんだなあと思います。豊かな自然と温かな人、そして美味しい料理。そんなものがあれば、人は自然に吸い寄せられるのではないかと…
今回、紹介した料理は、カボチャの甘さと生クリームの味わいが程よくミックスされていて、これから寒くなる時期には身体も温まり、何だかホッとさせてくれる味がしました。これからも、各地でオーベルジュを見つけたら取材して行きたいと思います。
最後に、この御夫婦には、2匹の猟犬と5匹の猫という同居人がいます。まだ、そんなに人には慣れていない彼らですが、こんな同居人と遊べるのも、オーベルジュの一つの楽しみ方だと思います。

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(C)フジテレビジョン