#121 スタッフからのメッセージ
■今回、取材でお邪魔したサン・トリニは、街道を車で走っていれば1分も経たずに通り過ぎてしまうような、町中を歩いても1時間も経たずにその全てを見てしまう事が出来るような、そんな小さな町でした。取材前の打ち合わせの時、持ち合わせで立ち寄った役場にいたのは副村長さん唯一人。その役場の中には、ちょっと広めの会議室と別の部屋に4~5卓の机があるだけで、この町を訪れた当初は、本当にこの小さな町でお祭りが開かれるのだろうか、と心配になってしまいました。ところが、打ち合わせを進めるうちに、その不安が徐々に期待へと変わっていったのです。
まず、どんなお祭りなのか心配に思って「去年のお祭りの時に撮った写真はないか」と尋ねると、副村長自ら家に戻り写真探し。嬉しそうな顔をして持ってきてくれた写真の中には番組でも紹介したキノコのハリボテがあちらこちらに飾られています。それを見ながら「これは皆、他の町からもらってきたものなんだ」と話す副村長の姿に、なんだか微笑ましい感じを持ちました。そうこうしているうちに現れたのがキノコを一生懸命探し出してきて息を切らしている町の奥さんです。彼女は、お祭りの日に展示するたくさんのキノコを遠くの山まで行って探し出してきたとの事。番組では紹介できませんでしたが、お祭りの当日、この付近のキノコ博士がやってきて、どれが毒キノコで、どれが食べるのかを説明するために1日中山を歩き回ってきた事に、このお祭りにかける情熱も見せ付けられたのです。そして次は、お祭り当日の天気の話。屋外で行われるイベントだけに雨が降ったらどうなるのかと心配して話を持ちかけると、この町では、しょっちゅうお祭りをしているから、ひとつ順延させてしまうと次の行事に影響が出るため雨天決行とのこと。何かにかこつけてはお祭りを開き、皆で騒いで楽しむのが大好きなんだという話に、この町の心意気を感じてしまったわけです。なんでも、小さい町には小さい町なりに良いところはあるもので、町の人皆が顔見知り。例えば、バカンスシーズンに遊びに行けず町に残っている人がいると、夜は自然に皆が集まって一緒に食卓を囲んでしまうほど皆仲がよく、その延長線上に、こうしたお祭りのイベントがあるとの事。とにかく、この町の人は皆で集まって何かをやる。そして、何かキッカケがあればお祭りまでもやってしまう大のお祭り好きだからこそ、今年で8回目になるキノコ祭りも、こうやって続けられてきたのです。
お祭り当日。取材をしながらイベント進行の様子を伺っていると、そこは手馴れた様子で段取りも手際も良く、付近の町から集まってきたたくさんの人も、町の人達も、皆楽しそうに賑やかな秋の一日を過ごしていました。
この番組を通じてフランス各地で様々なお祭りを見る機会がありましたが、こんなにのどかな町で、和気藹々と微笑ましい感じのするお祭りは初めてでした。観光では勿論の事、仕事でもなかなか取材する事のできない貴重な体験だったと思います。
ちなみに、お祭りの中で料理に使っていたキノコは、俗称「Pinin/ピナン」という名前で、図鑑などでは「Lactaire Delicieux」と呼ばれ、日本でいうと「乳茸」の一種だそうです。松の木の下に生えるもので、この町付近の山の中では「セップ(フランス版松茸)」の収穫が終わった後に、このピナンが土から顔を出すという事でした。
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