#120 スタッフからのメッセージ

■皆さんはプロヴァンスという地名を聞くと、どんなイメージを持っているでしょうか? 恐らく多くの人は、温暖で天気も良く、そんな環境の下、ワイン用のブドウ畑や野菜畑、果物畑が広がる緑豊かで肥沃な土地というイメージを持っているのではないでしょうか? 私も実は、今回取材に行く前までは、そんな印象を持っていました。そして実際に行ってみると…確かに、葡萄や野菜、果物などの畑が広大な敷地に広がっていて、非常に豊かな自然という感じは想像通りだったのですが、意外に思ったのが、そうした畑が作られている土壌が、そんなに肥沃ではなかった事でした。平地の多いフランスの中で、プロヴァンス地方というのは山や丘があり、なだらかな丘陵地帯という景色が魅力的な土地です。ただ、今回見かけた山のほとんどは岩山ばかり。緑が多く茂っているといよりは岩肌がモロに見える山ばかりだったのです。畑はというと、石が転がっているような乾いた土地が多く、肥沃というようりは「意外と貧しい土壌をしている土地が多い」というのが私の印象でした。そんな土地の上に逞しく育っているのがオリーブだったり、葡萄だったり、ラベンダーだったり、様々な南仏野菜だったりする訳です。今回取材させて頂いたワイン工場は、そんな岩山を繰り抜いて、洞窟のひんやりとした環境を上手くワイン作りに活かしている場所でした。岩山から入り口の建物だけが突き出ている外観は、どこか007に登場する隠れ家のような、サンダーバードに登場する基地のような感じがして、いわゆる「シャトー」と名の付くワイン工場とは一線を画す風情を醸し出していました。こんな所も、ここプロヴァンスの特徴を上手く取り入れていると言えるのかもしれません。
所で、番組で紹介した「Verjus/ヴェルジュ」ですが、辞書で引くと「未成熟ブドウ果汁、酸味のあるワイン」と説明されています。単語的には「Ver」の部分が緑、「Jus」の部分が果汁という意味だそうで、まさしく番組で紹介したヴェルジュの色「緑の果汁」という事になります。これは、まだ未成熟の若いブドウの実の酸っぱさを、そのまま、お酢の代わりにして料理に使われている調味料で、物凄くフレッシュで、尚且つ熟成もさせていないワインビネガーと言い換えても良いかもしれません。保存が効かず、わざわざ、このヴェルジュを作るためにブドウを育てている畑もないという事だったので、この味を楽しめるのは、こうしたワイン工場用にブドウを育てている地域に限られ、季節的にも、その収穫が行われる前後の時期だけ。秋限定の調味料というわけです。めったに味わう事のできない調味料ですから、もし、秋にワインの産地に行く事があったなら、ベルジュを使った料理があるかどうか、レストランで聞いてみるのも良いかもしれません。そうすれば「もしかして、この人はフランス料理通?」なんて思われるかもしれませんね。

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