#118 スタッフからのメッセージ

■ロワールといえば、ロワール川沿いに数々の古城が残るフランスでも屈指の美しい景観が残る場所。数多くの芸術家や文化人がここで過ごしたといいます。ロワール川沿いを走ると、岩を切り出した急な斜面に家が建っています。これはもともと、ワインを貯蔵するために作られたもので、冬でも気温が下がりすぎず、夏は涼しく年間を通してほぼ一定の温度を保てるという訳です。そんな当時のワイン農家の方々は自分達も一緒にそこに住んでしまおう、と次々と岩が切り出されていったのだそうです。それが今では一般の民家やワイン貯蔵は勿論、キノコ栽培などに利用されています。(#70、71参照)
さて、今回取材した町・トゥールはロワール川とシェール川に挟まれた町。13世紀から15世紀のステンドグラスや彫刻がみごとに残っており、ロワール古城巡りの出発地点として観光客の方々も集う賑やかな町です。そんな歴史ある町で生まれた「リエット」は1936年、この町にあった一軒のお肉屋さんで生まれました。その店のご主人、アードワンさんは当時「この町に名産になるものが作れないだろうか」と考えたのがきっかけで、リエットが作られたのだそうです。リエットというのは番組でも紹介したように豚肉を煮込み、ペースト状に潰したものですが、フランスのどこの家庭にもあるもので、おなかを空かせて帰ってきたけど家に何もない時など、ちょっとパンに塗って食べることができる、手軽でおいしいおかずとなるのです。今ではル・マンのリエットの方が有名になっていますが、もともとはトゥールが発祥の地。ここからリエットのレシピが広まったのです。トゥールのリエットは肉が大きく残っていて、その肉の食感を楽しむことができます。味は日本でいう豚の角煮にそっくり。よく味が染み込んでいて、10時間も煮込むので柔らかく、とてもおいしいものでした。この会社はリエットの他にもパーティーの仕出し料理なども作っていて、リエットにする前の豚の角煮(こちらでは角煮とは言いませんが…)も売っていて、そちらの味も試してみたい感じがしました。
工場では女性が中心となってリエットをフォークで潰していましたが、「フランスではフォークは日本でいう菜箸みたいなものです」と説明を受けました。「それにしても、何でフォークなんですか? わざわざ普通のフォークでこんな大量のお肉を潰すのはいくらなんでも大変でしょう。もっと改良できるんじゃないでしょうか?」と質問したところ、「何でフォークかなんて考えたこともありません。ただ、昔からの作り方を守っているだけですから」と皆さんそろっておっしゃいました。オートメーション化されているこの時代に、こういった昔ながらの作り方を守っているところがあるということは素晴らしいこと。これからも是非、伝統を守っていって欲しいと思いました。

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