#109 スタッフからのメッセージ

■今回の取材地・ペルージュという町は、リヨン周辺にヴァカンスで訪れた人達が、ちょっと車を止めて立ち寄っていく、そんな小さな観光地です。もともとは12世紀に築かれ、14世紀頃には織物やワイン作りで栄えていたそうですが、やがて町に住んでいた人々が近郊の大きな街に移り住み、一時は人口8人という時代もあったとか。しかし、中世の時代から残る石造りの町並みを何とか保存しようとした結果、今もこうして昔のままの姿を残しているわけです。町自体は1時間も掛からずに、その全てを歩き尽くせるほど小さいのですが、一歩足を踏み入れると、俗世間の喧騒を忘れ、歴史の中にタイムスリップしたような雰囲気が感じられる不思議な場所です。夏場は、ちょっと人が多すぎるのが残念ですが、人の少ない時間帯は、のんびり散歩するのに最適だと思います。聞いたところによると、広場に面して建てられているホテルの部屋は、中世の時代そのままの飾りや家具などで作られているそうで、取材の日には、町の教会で2組の結婚式が行われていました。泊まるにしても結婚式を挙げるにしても、こんな町で大切な日を過ごせるなんて、きっと良い記念になるんじゃないかと思います。
さて、ガレット・ド・ペルージュですが、今まで、様々な町でガレットを見てきましたが、その中でも特に素朴なお菓子、というのが第1印象でした。そもそもは、町の共同パン焼き窯でパンを作っていた時代に、余った生地に砂糖をまぶして作ったお菓子が、その原型だったといわれています。パン生地を丸く延ばし、バターと砂糖をたっぷりと乗せて焼き上げる。そんなレシピが今だに受け継がれ、この町で売られているのです。面白いのは、このガレットを町中で売っているお店の形。店が閉まっている時は、外から見ると単に窓が閉まっている風にしか見えず、開いている時でさえ、窓からヒョイとガレットをお客に渡すような、古い石作りの建物の窓だけを利用した簡単な作りになっています。恐らく、昔から、ペルージュでは、ワインやら織物やらをこうした窓越しに売っていたのではないかと思いますが、それもこれも、中世の佇まいを残すこの雰囲気を壊さない、心遣いだったのかもしれません。
ちなみに、今売られているガレットは、この番組で紹介したバターと砂糖を乗せて焼き上げたベーシックなものと、カスタードクリームに砂糖を入れたものを乗せて焼き上げた新しいものと2種類ありました。どちらも人気があるようで、町の散策のついでにお持ち帰り、という人をたくさん見かけました。

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