#108 スタッフからのメッセージ
■この取材に登場して頂いた漁師、フレデリック・ジャスロンさんに、取材前の打ち合わせで初めて会った時、実は、こんな印象を抱いていました。「彼は、本当に漁師なのだろうか。何処からどう見ても漁師には見えない…」と。というのも、私達の目の前に現れた彼の出で立ちは、よくある短パンにTシャツ姿。ちょっと見れば、ごく普通に会社勤めをしている男性の休日の格好にしか見えなかったというのが正直な感想です。しかも、打ち合わせでは、静かに整然と、言葉少なめながら端的に話し、ちょっとした仕草も穏やかで優しげ。よく見かける日に焼けて威勢良く話をする漁師のイメージとはかけ離れていたのです。そこで興味を持って、どうしてそんな彼が漁師になったのか、経緯を聞いてみると、フレデリックさんは、6年前まではスポーツ用具関係の会社に勤め、営業の仕事をしていたという話。それが、もともと釣りが好きだったのが高じて、なんとか海や川の近くで仕事ができないかという思いが強くなり、遂には自ら漁師になってしまったのだと、これまた静かに整然と説明してくれました。なるほど、そういう訳だったのです。だから根っからの漁師とは違う雰囲気を醸し出していたという訳です。ただ、そんなフレデリックさんといえども、いざ漁を始めると表情は一変します。川面から立ち上る朝もやを掻き分けて船を操り、ポイントに仕掛けた網を手繰り寄せる時の彼の表情は、まさに漁師そのもの。それが仕事なんだから当たり前といえば当たり前なのですが、家で話していた時の様子とはガラリと変わるところがプロの中のプロ。漁の助手を務める若い相棒には厳しく指導。網に掛かった魚を見極める目は鋭く、趣味が高じて得た仕事とはいえ、彼は既に漁師として1人前の仕事をしているんだなあと、あらためて実感させられました。
それにしても、朝早いのは苦手な身ではありますが、真っ暗な夜空に川面から朝もやが立ち上り、それが徐々に朝焼けの景色に変わり、やがて朝陽が昇る様子を船の上から眺めていると、本当に気持ちの良いものです。川岸の牧草地では牛が早くも朝食を食べ、川から白鳥が飛び立ち、水鳥が水面で遊んでいます。打ち合わせの時、フレデリックさんは、こんな事を言っていました。「自分は川の上にいるのが一番好きなんです。特に船の上から朝陽が昇るのを見るのが堪らない」と。そして、そんな話をしているフレデリックさんの姿を見て、こう思いました。自分のやりたかった仕事に就き、誠実に一生懸命働いている姿というのは、充実していてカッコイイものなんだなあ…と。
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