#107 スタッフからのメッセージ
■セルヴェル・ド・カニュを作る時に大量に使われる「フロマージュ・ブロン」。フロマージュとは、フランス語で「チーズ」、そしてブロンは「白」を意味し、つまり、「白いチーズ」のことをそう呼びます。牛乳に凝固剤を入れて固め、余分な水分を除いた後、熟成をさせずにそのまま食べる、まさに鮮度が命のフレッシュチーズなんです。
よくヨーグルトと比較して紹介されていますが、ヨーグルトほど滑らかではなく固形に近い感じ。味は、ヨーグルト風の爽やかな酸味はありますが、それほど強くなく、チーズとはいっても、まだ牛乳の味わいが残っています。食べ方は、ごく普通に、そのまま食後のチーズとしても食べられていますが、むしろデザートとして蜂蜜やジャムを乗せたり、時には、甘酸っぱいイチゴやブルーベリーを入れて食べる方が、好まれているように思います。何を隠そう私もその一人で、フランスでは、食後にチーズを食べる習慣があり店の人にも良く薦められるのですが、食後に熟成させたチーズを食べてしまうと、その濃厚な味わいで、それまで食べていた料理の味を忘れてしまいそうで、ほとんど食べた事がありません。ただ、そんな時、フロマージュ・ブロンだけは別。味はサッパリとしているし、ちょっと砂糖をかけただけでもデザート代わりになるので、食後にチーズを食べるとしたら「フロマージュ・ブロン」と決めているわけです。今回、このセルヴェル・ド・カニュを取材して見ようと思ったのも、材料にフロマージュ・ブロンが使われていると分かったから…というのも一つの理由です。元々好きだったチーズの、もう一つの楽しみ方。それを、セルヴェル・ド・カニュを取材することで発見できればと考えたからなんです。
さて、番組内では、敢えて説明しませんでしたが「セルヴェル・ド・カニュ」を、そのまま和訳すると「カニュ」は絹織物職人、「セルヴェル」は脳みそ、つまり「絹織物職人の脳みそ」という意味になります。あの白いチーズの状態を「脳みそ」と名付けるなんて、ついつい見たまんま、ひねりも何にも無い名前ではないかと思ってしまいます。ただ、よくよく考えると、ブッションの時にも少し説明したように、貧富の差が激しく、職人達がまだ貧しかった時代に食べていたものといえば、金持ちの人達が食べなかった牛や豚の臓物を工夫して作った料理ばかりだったのです。動物の胃袋や腸なんていうものが料理の材料として当たり前だったのです。そんな事から考えれば、彼らが「脳みそ」を食べていたかどうかは分かりませんが、白いフレッシュチーズを見て「脳みそ」と連想するのも、何だか頷けるような気もします。先ほどは、ちょっと甘いものを添えてデザートにも最適だと話しましたが、香草やニンニク、塩、コショウなどをフロマージュ・ブロンに入れてよく混ぜ、パンや野菜スティックなどに塗って食べるのも、また味わい深いものがあるので、このチーズを手に入れる機会があったら、是非、試して欲しい一品です。
[0]もどる
(C)フジテレビジョン