#95 スタッフからのメッセージ
■和仏辞典で「タコ」という項目を見てみると、「pieuvre」(ピューヴル)とあり、この地方で使われている「rouille」(ルーイル)とは違います。でも、ル・グロー・デュ・ロアの街の人々はタコのことを「rouille」と呼びます。実はこの「rouille」には「錆び」という意味があり、タコの色が鉄の錆びた色に似ているところから来ているのだそうです。そういえば、生きているときも、料理に使われて加熱されたときも、タコは錆び色に似ていることに気づきます。
ラングドック・ルシヨン地方、サント・マリー・ド・ラ・メールの湾をはさんで西側にあるル・グロー・デュ・ロアは、港から入ってくる船のための運河があり、入ってくるときだけ回転して船を通す橋が街の真ん中にある街で、その橋を挟んで運河の周りにはレストランが並ぶ、観光にも適した港町特有の明るい雰囲気を持ったところです。
蛸壺を海に沈めてタコ漁をしているジェロム・ダルさんは、普段はテリーヌ(バックナンバー#90参照)も併せて捕っている若い漁師さんで、私たちの取材に快く船に乗せていただく事を許可してくれました。しかし、問題はタコが捕れるかどうかということで、時期的にはいいのですが、仕掛けてある場所が湾から近いところにしかないので、彼は行く前からずいぶん心配していたのです。20分ほど船を走らせ、蛸壺の沈めてある場所まで来ると、早速巻き上げを始めるダルさん。1本のロープに付いている蛸壺は全部で60個ぐらい。私たちはカメラを構え、蛸壺に入っているタコを待ち、10個、20個と…。しかし、50個蛸壺を巻き上げた時点で、蛸壺の中に入っていたのは海の底の泥だけ…。彼が「もう一つの場所に行かないと無理かも」と言ったとたん、巻き上げた蛸壺についにタコが! ヌラヌラと壺の中から現れたタコを見てホッとした私たちだったのです。が、結局場所を変え、120個ほどの蛸壺を巻き上げて採れたタコはその1匹だけ。ダルさんも商売にならない状態で、タコも海に帰したのです。ですから番組で画面に映っているタコは別の意味で大変貴重なものなのです。これもやはり、普段のスタッフの行いがいい(?)ためなのでしょうか。
タコ料理は日本人からみたら「ちょっと茹ですぎ」と言いたくなる感じでしたが、このタコ料理だけに使うアイオリソースは、すり下ろした生のニンニクが「え? 明日起きたあと臭くないかなあ」と思うぐらい利いていて、とっても大人の味がしたのでした。
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