任侠ヘルパー
- 第七話 -

そこへ、彦一が駆け込んできた。初美はとっさに彦一に向かい包丁を構え、気づくと包丁を突き出していた。それを素手で受け止めた彦一は、事態を孝江に気づかれないよう無言のまま、「しゃべるな」とばかりに初美に向かい首を横に振る。切られた右手からは、血が滴り落ちていた。やがて、連絡を受けたりこと晴菜がやってきて、りこは彦一の手当てを、晴菜は孝江の世話をする。初美は自分がしてしまったことを詫びつつも、孝江にはこのことを話さないでほしいと頼む。すると、彦一は、明日から孝江を「タイヨウ」で預かると告げる。初美がそれを拒むと、このまま自分の人生を棒に振るのか、と凄んでみせた。緊張の糸が切れた初美は、孝江と心中することまで考えていたと涙ながらに明かす。

後日、孝江は1週間のショートステイで「タイヨウ」にやってくるが、すべてが気に入らずヘルパーらに当り散らす。それを見た初美は気が気ではないが、手を差し伸べることを彦一に止められる。そんななか、彦一は孝江の部屋に涼太をやる。自分はヘルパーだと名乗る涼太に、孝江は少しずつ心を開いていく。

その頃、初美は職探しを始めるが、孝江の介護のことを話したとたん断られてしまう。さらに、自宅にやってきた滝本を、母親が施設にいるのに自分だけフラフラすることはできないから、と追い返してしまう。

そんななか、孝江の部屋を訪ねた彦一は、あんなに懸命に親の面倒を見る生徒がいて、あんたは立派な先生だ、と声をかける。さらに、40歳を過ぎても生徒のままでは、先生も生徒もたまらないだろう、そろそろ娘を卒業させてやったらどうだ、と言葉を続ける。孝江は、それを静かに聞いていた。その後、孝江はそれまで拒んでいたヘルパーの助けを借りて、食事をとり始める。そんな孝江を、彦一とりこが見ていた。

同じ頃、自分を取り戻そうと決意した初美は、自殺用に持っていた練炭と睡眠薬をゴミ捨て場に捨てる。

1週間の滞在を終えた孝江が自宅に戻り、長岡家ではまた通常通りの生活が始まった。しかし、これからは必要に応じてヘルパーが手伝いに行くことができる。孝江は、その際は、彦一に来てほしいと指名までしてきた。

その日の夜、「ハートフルバード」の片隅で、人目を避けて誰かと電話をする晶の秘書・日野弥生(中別府葵)の姿があった。電話の相手に晶の病名を告げ、「機は熟した」と話す弥生。

その頃、怪しい男たちを乗せた黒塗りの車が「タイヨウ」の前で停まった。男たちは、窓を開け施設をうかがい見ていた。

一方の彦一は、涼太に手を引かれホールにやってくる。そこには、彦一の誕生日を祝おうと、職員たちだけでなく、利用者までが集まっていた。ケーキを差し出され、ローソクを吹き消せ、と迫られる彦一。嫌々ながらも、一息でそれを吹き消し……。

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