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第2シーズン #13

防空壕のお姉さん
防空壕のお姉さん
  • 脚本:林民夫
  • 演出:鶴田法男
  • 出演:立花祐美 … 山田夏海
  • 立花久美子 … 渋谷琴乃
  • 槌田清子 … 宮内順子
  • 槌田幸子 … 梅宮万紗子

いまから20年ほど前のこと。当時4歳だった祐美(山田)は、母・久美子(渋谷)と祖母の家に行く途中、防空壕を見つける。その夜、眠りについた祐美は、不思議な体験をした。祐美が目を覚ますと、何故かそこは防空壕の中だった。そこには、もんぺ姿のまま朽ち果てている骸骨があった。その骸骨が、突然、祐美の手を握ると、辺りは一瞬にして草原に変わった。祐美が、恐る恐る手の先に目をやると、それは骸骨ではなく、若い女性になっていた。ふたりは、手をつないだまま草原の中を歩いていた。祐美がその女性を見上げると、彼女の目には涙が滲んでいた。そのとき、遠くから久美子の声が聞こえてきた。その声で目を覚まし、防空壕から飛び出す祐美。すでに夜が明けていた。
久美子は、祐美がいなくなったことに気づき、近所の人たちとともに行方を捜していたのだという。祐美は、自分が体験した出来事を必死に説明したが、誰にも信じてもらえなかった。すると、祖母の清子(宮内)が、祐美に1枚の写真を見せた。そこに写っていたのは、夢で見たあの若い女性だった。あの防空壕の中で亡くなった清子の妹・幸子(梅宮)なのだという。祐美は、久美子とともに防空壕跡に花束を供え、帰路につき…。

夜のおじさん
夜のおじさん
  • 脚本:三宅隆太
  • 演出:鶴田法男
  • 出演:森公美子 … 森公美子
  • おじさん … 山谷初男
  • 河村知代 … 北条文栄
  • 牧野弓枝 … 麻生侑里

引越しを終えたばかりの森は、新居でひとりワインを飲んでいた。瓶が空になっていることに気づいた森は、千鳥足で外に酒を買いに出た。すると、1階の管理人室の前で、ひとりの老人(山谷)から声をかけられた。どうやらマンションの管理人のようだった。森は、その老人に地図を書いてもらい、近くの酒屋さんを教えてもらう。
あくる朝、森が管理人室をのぞくと、そこにいたのは知代(北条)だった。森は、あの人は夜だけ管理人をしているのだろう、と理解する。
それからというもの、森は毎晩のように管理人室を訪ね、老人と酒を飲んだ。老人は、森が歌手だと知らなかったようだが、彼女自身、そんなことは気にも留めず、楽しい時間を過ごしていた。
そんなある日、森の部屋に遊びに来ていた友人の弓枝(麻生)が、話を聞いてその老人に会いたいと言い出した。森は、先日老人と一緒に撮った写真を持って、弓枝とともに管理人室を訪ねたが、彼は不在だった。
それ以後も老人の姿を見かけないことに不審を抱いた森は、昼間の管理人・知代を訪ね、写真を渡して欲しい、と頼んだ。すると知代は、その老人は森と同じ部屋に住んでいたが交通事故で亡くなった、と言い出す。
その夜、森がなかなか寝付けないでいると、あの老人が現れた。老人は、森にだけは知られたくなかった、と寂しそうに笑うと、「楽しかったよ」と言い残して消えてしまう。 それ以来、あの老人が姿を現すことはなかったという。

さよなら俊彦
さよなら俊彦
  • 脚本:林民夫
  • 演出:鶴田法男
  • 出演:松村信子 … 佐藤仁美
  • 松村俊彦 … 小林且弥
  • 松村菊恵 … 朝加真由美

信子(佐藤)は、ある事情から大学を中退して、就職した。5年前から母・菊恵(朝加)の体調が悪くなり、入退院を繰り返していたからだ。
ある日、仕事を終えて菊恵が入院している病院を訪れた信子は、菊恵から妙な話を聞かされる。5年前、バイクの事故で亡くなった弟の俊彦(小林)が病院に来たというのだ。俊彦は、昨夜もやってきて、菊恵のことを睨んでいたらしい。
そんな話を聞いた信子は、俊彦のことを思い出していた。父を早くに亡くしたこともあり、信子は、まるで父親のように厳しく俊彦に接していた。事故があった夜も、俊彦と喧嘩してしまったのだ。弟は、きっとまだ私たちを恨んでいるに違いない――信子はそう思っていた。
信子が家に戻ると、信子と菊恵の写真が入っていた写真立てのガラスに突然ヒビが入った。ヒビは、ちょうど菊恵の顔あたりに入っていた。するとそこに、菊恵の容態が急変した、という知らせが。信子は、慌てて壁に掛けておいた車のキーをとろうとしたが、どこにもない。信子は、俊彦の遺影に目をやり、どうしてそんなことをするのか、と叫んだ。すると、背後で音がして、テーブルの上に車のキーが…。信子は、それを掴むと、慌てて飛び出した。
信子が車を走らせていると、前方で交通事故が起きていた。行く手をふさがれた信子は、わき道に入り、病院へと急いだ。信子が病院に到着すると、そこに俊彦の姿があった。菊恵がいる、集中治療室に入っていく俊彦。俊彦は、菊恵の傍らに立つと、その手を握り締め、信子の方を向いてうなずいた。
その姿を見た信子は、すべてを理解した。俊彦が病室に現れたり、ガラスにヒビが入ったりしたのは、菊恵の体の変化を知らせようとしていたのだ。そして、車のキーを隠したのも、信子を事故から守るためだったということを…。
菊恵は、危険な状態を脱し、命を取りとめた。信子は、それ以来、俊彦の姿を見ることはなかったが、いまも彼が信子や菊恵を見守ってくれている、と信じていた。

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