『遠い避難所~取り残される医療的ケア児者~』

2026.09.25更新

報道・情報

第35回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:仙台放送)

高橋桃子さん(右)と母・実和子さん(左)

『遠い避難所~取り残される医療的ケア児者~』

<10月2日(金) 27時00分~28時00分>

避難所にたどり着けない災害弱者の現状

難病を患う仙台市の高橋桃子さん(28)は、電気に頼る医療的ケアが必要だ。母親の実和子さんは悩む・・・「大雨で停電したらどこに逃げよう?」。電源を確保できる避難所は川の向こう側。桃子さんと医療機器を持って避難する必要があるが、2人を手助けしてくれる人は決まっていない。東日本大震災では多くの障害者が亡くなった。その教訓から学ぶべきこととは。「誰一人取り残さない防災」を実現するために取り組む人たちを伝える。

「伝えることを諦めない」。停電で命の危機になる医療的ケア児者から「誰一人取り残さない防災」を考える

仙台市の高橋桃子さん(28)は、進行性の難病・レット症候群を患っている。日常的にたんの吸引や夜間の人工呼吸器の装着が必要な、いわゆる「医療的ケア者」だ。桃子さんは母子家庭。母親の実和子さんは悩む・・・「大雨で停電したら、どこに逃げよう?」。桃子さんにとって、停電は命にかかわる。しかし、近所で確実に電源を確保できる避難所は川の向こう側にある。集合住宅の上階から、桃子さんと車いす、医療機器を持って避難しなければならないが、母子2人を手助けしてくれる人は決まっていない。

東日本大震災の経験を伝える高橋桃子さん(右)と母親の実和子さん(左)

15年前の東日本大震災で、桃子さんと実和子さんは自宅に孤立した。「自分たちの存在を知ってもらえていたら、支援が届いたかもしれない」。後悔を次の備えに変えるため、経験を伝え始める。
東日本大震災では、宮城県内の障害者の死亡率が健常者の約2.7倍に上った。このことなどが問題視され、災害弱者と共に考える防災、いわゆる「誰一人取り残さない防災」が世界的に重要視されている。国も対策を進めている。支援が必要な人が「どこに」「誰と」「どうやって」逃げるのかなどを、事前に決めておく「個別避難計画」の作成だ。しかし、宮城県の作成率は11.1%と、全国平均14%を下回っている。

東日本大震災で亡くなった 医療的ケア児・狩野悟さん

石巻市に住む狩野由紀さんは、東日本大震災で、医療的ケアが必要だった長男の悟さん(当時17)を亡くした。医療機器は津波によって使えなくなり、苦しむ我が子を抱きしめることしかできなかった。どうすれば救うことができたのか・・・。答えを出せずにいる。
同じ石巻市内では、東日本震災前から「誰一人取り残さない防災」に取り組んでいた地域もあった。支援が必要な人1人につき、2人の支援者を事前に決めておく「防災ネットワーク」という仕組みだ。これが、大きな役割を果たした。一方で、町の民生委員・蟻坂隆さんは、特定の人に支援の負担をかけすぎないことや、支援者の命も守ることを忘れてはいけないと話す。 

宮城県栗原市 医療的ケア者の避難訓練 

宮城県栗原市では、行政や支援者・地域の人が協力して、医療的ケア者を避難所まで運ぶ避難訓練が行われた。戸惑いながらも、多くの課題と希望が見つかった。
「誰一人取り残さない防災」。よく使われる言葉の裏には、多くの課題が残されている。東日本大震災の発生から15年。その教訓から学ぶべきこととは?すべての命をつなぐために取り組む人たちのいまを伝える。

コメント
ディレクター・安達琴乃(仙台放送報道部)

「東日本大震災が発生した時、私は中学2年生でした。仙台市で被災したものの“取り残された人たち”について当時は考えることはありませんでした。しかし7年前、医療的ケア児者の取材をはじめ、関わるうちに、その課題の大きさに気付きました。身近に起こりうる停電ですら、命にかかわり、避難も難しい。日々のケアに追われ、防災について考える余裕すらない。今回取り上げた高橋桃子さんたちのように、声を上げることができる人は多くありません。だからこそ、その声を見逃してはいけないと思いました。“災害弱者”という言葉は、自分には関係ないと思う人も多いかもしれません。しかし、災害時に自分がけがをしていたら?おなかに赤ちゃんがいたら?高齢の祖父母や、大切な子供たちはどうでしょうか。誰しもが、無関係ではないはずです。あす大災害が起きたら“誰一人取り残さない防災”は実現できるのか?考えるきっかけになればと思います」

【番組概要】

第35回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『遠い避難所~取り残される医療的ケア児者~』(制作:仙台放送)
≪放送日時≫
10月2日(金) 27時00分~28時00分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
プロデューサー:西村和史(仙台放送 報道部)
ディレクター: 安達琴乃(仙台放送 報道部)
ナレーション:荒井聡太(青二プロダクション)
撮影:倉岡 潤(仙台放送 映像制作部)、佐々木正明(仙台放送 報道部)
編集:上池隆宏(仙台放送 映像制作部)
CG:清野雅敏、菊地 渉(仙台放送 映像制作部)
タイトル:小熊美優(仙台放送 映像制作部)
MA:市原貴広(ヴァルス)
音効:交野優奈(ヴァルス)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。