2025.09.30更新
報道・情報
営業中止の五ケ瀬ハイランドスキー場を1人守り続ける川崎さん
<10月7日(火) 27時10分~28時10分>
宮崎県五ヶ瀬町にある日本最南端のスキー場「五ヶ瀬ハイランドスキー場」が、2022年の台風被害により営業中止に追い込まれた。そんな中、翌シーズンの営業再開を信じ、たった1人でスキー場に通い、施設の管理を続ける男性がいた。スキー場の運営会社に勤務する川崎一仁さん。雪が残る山を登り、電気もガスも止まっている氷点下のスキー場で1人作業を続ける川崎さんの思いとは。
2022年の台風では「五ヶ瀬ハイランドスキー場」の施設に大きな被害はなかった。スキー場につながる唯一のアクセス道路が至る所で崩落、寸断し営業中止に追い込まれていた。スキー場は大丈夫なのに営業できない・・・。川崎さんは悔しい思いをしながらも「自然の事だから仕方がない。冬にお客さんを迎えられるように準備するしかない」と話し、春から夏にかけて1人で作業を行っていた。そんな川崎さんに知らせが届く。「五ヶ瀬ハイランドスキー場の2年連続営業中止」。道路の普及状況を見てある程度は予想していた。でも再び届いた「営業中止」の発表・・・。それでも川崎さんは前を向いていた。
営業中止のスキー場で1人作業する川崎さん
営業中止のスキー場へ上る川崎さん
「五ヶ瀬ハイランドスキー場」が出来たのは35年前。山中でヤマメの養殖場を経営する1人の男性の提案から始まった。今年82歳になる秋山治さん。南国というイメージが強い宮崎県において、スキー場がある五ヶ瀬町鞍岡地区は、10月下旬には初雪が降り、50センチメートル近い雪が積もる。この地域の人達は冬になると深い積雪で仕事ができない。そこで生活を苦しめる雪を利用することが出来ないか?そう思い、1人で山を歩き、ヘリコプターで空から観察し、近くの山にちょうどいい斜面がある事を見つけてスキー場建設を五ヶ瀬町に提案した。しかし建設費用はおよそ20億円。当時の町の年間予算(1980年)とほぼ同じ金額だった。その後5年間かけて気象観測を行い、スキー場が建設できることを実証し、発案から13年後の1990年、ついに町営スキー場としてオープンにこぎ着けた。当時、町の人口はおよそ5000人。その10倍以上の5万人を超えるスキー客が訪れ、町は大いににぎわった。
五ケ瀬ハイランドスキー場
営業再開を前にゲレンデ作り
オープン当初こそスキーブームに乗り、多い時で9万人が訪れていた「五ヶ瀬ハイランドスキー場」。しかしスキー人口の減少と共に来場者は減り続け、現在は2万人前後と厳しい経営となっている。そんな中で2年連続の営業中止。住民の中には営業再開に疑問の声をあげる人もいるなど揺れ動くなか、3年ぶりに再開の日を迎えた。
「2022年に営業中止となった五ヶ瀬ハイランドスキー場。その後冬になり、誰しもがスキー場の事を忘れていた頃、担当カメラマンから“誰もいないスキー場を一人で守り続けている人がいる。取材したいので手伝ってほしい”との声掛けがあり取材はスタートした。初めてスキー場を訪れたのは2023年2月。麓で川崎さんと出会い、車でスキー場への道を登った。道中は至る所で道が崩れ、完全に崩落している所もあり自分たちの想像以上の被害だった。たどり着いたスキー場は人影もなく、冷たい風だけが吹きつけ、静寂だけが支配していた。35年前のオープン時は大いににぎわい、当時は“夢”のようだったと街の人は語る。しかし今は来場者が減少し町の予算を使って運営している。バブル期に作られ、今は赤字経営となっている観光施設は全国に数多く存在する。継続か撤退か、町が揺れ動くなか再開を決定した五ヶ瀬町の判断は正しかったのか、今後を見つめていきたい」
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