2025.09.20更新
報道・情報
事故後、集中治療室で治療を受ける田村康至くん
<9月27日(土) 25時45分~26時45分>
2023年、新居浜市の保育園で起こった離乳食のリンゴによる窒息事故。当時生後8ヵ月だった田村康至くんは今も意識不明で、家族による24時間体制の在宅看護で命をつないでいる。重篤な事故から2年。通っていた保育園のその後の再発防止策は。そして、事故を受けて愛媛県内の保育園がどう変化したのか。全国で保育園での窒息事故が繰り返される中、康至くんと家族の今を通して、悲しい事故を二度と起こさないために必要なことは何かを考える。
田村敦さんと妻の早希さんは、2人の息子と一緒に愛媛県新居浜市で暮らしている。2歳7ヵ月になる次男の康至くんは、生後8ヵ月の時、慣らし保育中だった市の認可保育所で、刻んだ生のリンゴを喉に詰まらせて心肺停止の状態になった。心拍は再開したものの、低酸素脳症で脳に深刻なダメージを受けた康至くんの意識は今も戻っておらず、人工呼吸器をつけ、家族による24時間体制の在宅看護で命をつないでいる。2時間ごとの体位変換に痰の吸引。動くことも話すこともできなくなった我が子をケアをするために、両親はそれまでの生活を変え、新しい日常を生きている。
命をつなぐため気管切開をした康至くん
24時間、自宅で康至くんの看護を行う両親
左から) 父・敦さん、母・早希さん、康至くん
事故が起きる前、元気にハイハイする生後8ヵ月頃の康至くん
「自分たちのありのままの姿を見てもらうことで、息子のような事故が防げるのならば・・・」と、康至くんが2歳を迎えたタイミングで、両親は実名で顔を出して取材に応えることにした。両親の言葉には、日常を奪われた悔しさや葛藤を抱えながらも、現実と向き合い日々を生きる覚悟があった。
2024年3月、有識者などで作る新居浜市の検証委員会は報告書を市に提出。園の問題点として「国のガイドラインの内容が職員に浸透しておらず、生のリンゴの提供が重大な誤嚥(ごえん)リスクにつながる可能性があるという認識が低かった」ことなどがあげられた。実はこうしたリンゴによる窒息事故は、2016年以降、全国の保育園などで相次いでいる。なぜ、事故は繰り返されてしまうのか。保育の指針を示す国のガイドラインや、愛媛の認可保育所への独自アンケート、そして実際の保育現場を取材すると、事故の背景にある課題も見えてきた。
重篤な事故から2年。通っていた保育園のその後の再発防止策は。そして事故を受けて愛媛県内の保育園がどう変化したのか。康至くんと家族の今を通して、事故を繰り返さないために必要なことは何かを考える。
「“親のエゴと言われても、康至の運命が燃え尽きるその日まで私たち夫婦で支え、生まれてきてくれた価値を少しでも見い出してあげたい”父・敦さんのこの言葉に、息子への深い愛情と、親としての凄まじい覚悟を感じました。そして“事故を繰り返さないために必要なことは何なのか”という問いに、取材者として、子を持つ親として自分も向き合いたいという思いを強くしました。事故から2年、愛媛では事故の検証や救命講習、離乳食の研修なども行われ、再発防止の意識は確実に高まっています。その一方で、慢性的な人手不足は愛媛の保育現場にも横たわっていて、理想とする“子ども一人一人に合わせた丁寧な保育”の実現を妨げていると感じます。“事故を繰り返さないために必要なことは何か”それぞれの立場でこの問いについて考えてもらうことが課題解決の糸口になれば、そして、そうした課題をつまびらかにしていくことが私たちの役割であると思っています」
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