『壕(ガマ)のおくり人 沖縄戦80年・遺骨収集夫婦の記録』 

2025.10.04更新

報道・情報

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:沖縄テレビ放送)

沖縄の壕(ガマ)で遺骨収集の活動中の浜田夫婦

『壕(ガマ)のおくり人 沖縄戦80年・遺骨収集夫婦の記録』 

<10月11日(土) 26時45分~27時45分>

沖縄戦の悲劇を今、遺骨収集を通して見る

地中には多くの戦没者遺骨が残されている。25年間夫婦で遺骨収集を続けている浜田哲二と浜田律子。全国紙のカメラマン・記者だった2人は、なぜ縁もゆかりも無い沖縄で活動を始めることになったのか。せめて遺骨だけでも帰ってきてほしいと願う遺族の思いが2人の活動から見えてくる。遺族に寄り添い活動を続ける中、今年、壕の中で新たな発見が続いた。沖縄戦の記憶が80年経過した今、新たに掘り起こされようとしている。

壕から発見されたのは小学生や中学生の持ち物- 子どもたちが巻き込まれていく戦争の悲惨さを伝える

沖縄には今も活動を続ける多くの遺骨収集ボランティアがいる。しかし、夫婦で25年間、県外から通い続けて活動する2人は珍しい存在だ。元朝日新聞のカメラマン・浜田哲二。そして妻・律子は読売新聞の元記者だ。沖縄戦の戦没者遺族ではない2人が遺骨収集を始めたのは、約30年前に取材で出会った遺骨収集ボランティアからかけられた言葉がきっかけだった。「君たち新聞記者は、戦後50年、60年の時に来て、騒いで帰る。君の足の下には遺骨が埋もれている。1柱でも、掘ってあげたらどうだ」。地面には収集することが難しいほどの細かい遺骨が無数に散らばっていた。海外の紛争地を取材してきた浜田は、この場所が戦場だったことを思い知らされた。そこから現在まで続く活動が始まった。

収集した遺骨に手を合わせる浜田夫婦

沖縄戦当時、住民や兵士が身を隠した自然洞窟は沖縄では壕(ガマ)と呼ばれる。遺骨だけでなく遺留品を掘り出し、刻まれた名前をきっかけに遺族との交流も生まれた。戦後80年が経過しても、遺族は亡き肉親を思い、涙をこぼした。
戦場だった場所から見つかるのは兵士の遺骨だけではない。住んでいる場所が戦場となり、巻き込まれた県民の姿があった。小さな小さな遺骨が見つかった。国によるDNA鑑定によって遺族に返された遺骨は2025年3月末時点で6柱にとどまっている。巻き込まれた住民の遺骨も、何とか遺族の元に帰したいと浜田夫婦はDNA鑑定の実施を呼びかけ続けている。2人の活動に呼応した若者たちも活動に参加している。遺骨収集は遺族や戦没者のための活動という側面だけでなく、沖縄戦を次の世代に伝えるための意味を持ち始めている。

2人が活動する壕(ガマ)戦時中は多くの人が身を隠した場所

こうした中、2025年に活動を開始した壕で、子どもの物とみられる遺留品が次々と発見された。中学校の校章に、箱の破片に刻まれた少女の名前・・・?その場所は、戦時中に日本兵が、隠れていた住民を追い出したのちアメリカ軍の攻撃を受け、全員が死亡したという証言が残されている。中学校の校章発見のニュースをきっかけに、ある学校の遺族会から夫婦の元に次々と連絡が入る。名前が刻まれた箱の持ち主は沖縄戦を生き延びたのか。ジャーナリストであり、遺骨収集ボランティアである夫婦の活動から、沖縄戦の記憶が新たに掘り起こされ始めた。
真っ暗な壕や、そこから掘り出される遺骨そして遺留品が、沖縄戦を知らない私たちに当時を語りかける。

コメント
ディレクター・松本早織(沖縄テレビ 報道局報道部)

「青森県在住で沖縄県外出身、沖縄戦の遺族ではない夫婦がなぜ遺骨収集を続けているのか?2人に会って最初に浮かんだ疑問は、既に掘り起こされた11人の戦没者遺骨を前にあっという間に脇に追いやられ、今も残る戦争の爪痕をいかに伝えるかに頭が切り替わりました。活動を追ううちに最初の疑問の答えは次々と見つかり、沖縄戦を直接知らない私たちが戦争とは何かを考えるために、この活動があるのではないかと感じ、ドキュメンタリーの制作へと至りました。
少しでも、どんなに小さくても、何か手がかりが掘り出されるたびに遺族や生存者を探し出そうとする浜田夫婦の姿勢は、戦後80年の今、沖縄戦をどのような手法で伝えていくか日々悩みながら報道に取り組む私たち記者を鼓舞するものとも感じています。2人の活動や暗い壕の様子、そしてご遺族や体験者の言葉や表情から、沖縄戦と戦後80年の歳月に思いを巡らせてもらえたらと感じています」

【番組概要】

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『壕(ガマ)のおくり人 沖縄戦80年・遺骨収集夫婦の記録』(制作:沖縄テレビ放送)
≪放送日時≫
10月11日(土) 26時45分~27時45分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
ナレーション :尚玄
構成 :渡邊修一
撮影・編集 :新垣隆雄(沖縄テレビ開発)
ディレクター :松本早織(沖縄テレビ報道部)
プロデューサー :大濵直樹・古謝有智・本橋亜希子(沖縄テレビ)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。