2025.09.17更新
報道・情報
大会前練習に励む木村悦子さん
<9月24日(水) 25時45分~26時45分>
2024年4月に開催された水泳の全国大会で、50m、100m、200mの3種目で一気に世界新記録を樹立した、島根県の木村悦子さん。出場したのは「平泳ぎ95歳以上の部」。悦子さんは2025年1月で96歳だ。柔らかな出雲弁で「三途の川でも世界新記録」と笑う、大の負けず嫌いのスーパーおばあちゃん。原動力はどこにあるのか。そんな悦子さんの人生は逆流とも呼べる運命の連続だった。
島根県出雲市多伎町で一人暮らしをしている木村悦子さん。密着取材を始めると、とにかく驚かされることばかりだった。プールで泳ぐのはもちろん、日々の生活は階段を上がった先の2階リビングで過ごしていたり、相棒のバイクでさっそうと買い物へ出かけたり・・・。年齢を感じさせない生活。世界記録保持者らしく、体力には全くの衰えなし。もちろん心もパワフル!大の負けず嫌いで、優勝した賞状も、タイムが気に入らないと塗りつぶしてしまったり。水泳の大会では、負けても仕方のないはずの10歳年下の選手相手に、本気で勝とうと挑んだり。
バイクで買い物に行く木村悦子さん
そんな悦子さんだからこそ、これまでさぞ順風満帆に人生を楽しんできたのかと思いきや、とにかく壁が立ちはだかることばかりで、やることなすこと全てがうまくいかなかったという。大好きな水泳も、幼いころに始めたものの10代からは戦争のために遠ざかることを余儀なくされ、再びプールに入ったのは60代になってからのことだった。両親の反対を押し切ってまで結婚した最愛の夫も、悦子さんがプールで泳ぐ生活に戻って少しして病気となり、世界新記録など数々の活躍を見てもらう前にみとることとなった。
木村悦子さんが泳いでいる水中の様子
そして意地悪な運命は、今もなお繰り返し悦子さんに襲い掛かる。「3種目の世界記録樹立」この快挙の次の目標として、まだ自身が手に入れていない25mの日本記録を狙っていた悦子さんだったが、平泳ぎ選手としては致命的な膝のけがを負ってしまう。96歳の誕生日は病院のベッドで迎え、水泳に戻る日も来ないのかもしれない。それどころか日常生活すらままならなくなるのかもしれないという。そんな絶望にも簡単に負けないのが悦子さん。
なぜ彼女は立ちはだかる壁にあらがい続けることができるのか。あらがい続けたその先に何があるのか。逆流を泳ぎ続ける悦子さんが教えてくれることとは。
「世界記録保持者とはいえ、悦子さんは90代後半。穏やかな生活かと思いきや、スケジュールはびっしり。次から次に予定をこなす悦子さんに、24歳の私はついていくのもやっとなほどでした。そして驚かされたのが“負けず嫌い”の精神。“勝ち負けにこだわらず穏やかに”というのが大人になるということなのかと思っていたからこそ、がむしゃらな姿は新鮮でした。また、悦子さんが番組を通して語ってくれた“思い通りにいかない人生”。誰もが経験する当たり前のことですが、どう向きあえばいいのか悩むものでもあると思います。特に私のような世代にとっては、まだ人生経験が少ないため1つの失敗を重く感じてしまうこともあります。だからこそ、悦子さんが90歳を超えて“面白い人生だった”と笑っている姿をみて、今焦って答えを求める必要はないのだと、とにかく人生から逃げずにいることができれば、いつか笑える日が来るのかもしれないと希望を感じました」
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