2025.09.08更新
報道・情報
立山・室堂平を進むブルドーザー
<9月15日(月) 26時45分~27時45分>
3月、白銀の世界が広がる北アルプス・立山連峰。無垢(むく)な雪原に、春の訪れとともに一本の道が開かれる。立山黒部アルペンルートの全線開通に向けた、バス道路の除雪作業だ。アルペンルートの営業期間は毎年4月から11月まで。冬の間は雪に閉ざされ山に入ることはできない。そんな中、高い技術力を買われて長年除雪作業を委託されているのが、富山県滑川市にある建設会社。作業を行う除雪隊は総勢11人、泊まり込みで作業を行う。アルペンルートの春を開く除雪隊に密着した。
国際的な山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」は、世界屈指の豪雪地帯にあり、冬の間は閉鎖される。春の営業開始に向け、麓から最高地点・室堂までの全長31.3キロのバス道路を切り開くのが“除雪隊”の仕事だ。厳冬期の北アルプス・立山で50日間、泊まり込みによる作業を行うのは総勢11人。それを束ねるのは、この道40年の大ベテラン・重機オペレーターの瀬戸進さん。今年は「雪が多い」「いつもと違う」。それでも4月中旬の営業開始日までには何としてでも間に合わせなければならない。瀬戸さんはまず、除雪の目安となる道筋を付けていく。道路沿いに立てられた竹のポールと重機に搭載されたGPSが頼り。けれど、場所によっては使えない。ベテランの勘が何よりの道しるべ。除雪は、瀬戸さんが付けた道筋をもとに作業が進む。ショベルカーで崩した雪を、ロータリー除雪車が取り込み、道路の外へ飛ばしていく。それをひたすら繰り返しながら道路を開いていくのだ。
左から)古栃遼さん、瀬戸進さん
しかし除雪隊は年々高齢化が進み人手も足りない。11人の中では唯一の20代で、除雪歴1年の若手・古栃遼さんは、今年初めてロータリー除雪車に乗る。ところがなかなかスムーズに進まない・・・。自然が相手の仕事、マニュアルはない。「先輩を見て覚える」のが基本。雪と格闘しながら、自分なりの正解を見つけていく。
「雪の大谷」除雪作業
4月に入りいよいよ始まるのが、巨大な雪の壁「雪の大谷」の作業。春のアルペンルート最大の見どころでもある。ここは雪の吹きだまり。積雪は20メートル近くになることもある、除雪の最大の難所。他の除雪区間とは違い、除雪隊にとっては「商品」。特別な使命感がある。ブルドーザー2台で細心の注意を払いながら少しずつ削っていく。いかに美しく垂直な壁をつくるか・・・職人魂が生み出す絶景だ。
厳しくも美しい北アルプス、一面の銀世界で働く除雪隊。富山が世界に誇るアルペンルートの陰の立役者たちを追った。
「冬の間、立山黒部アルペンルートで黙々と除雪作業にあたっている人たちのことは、ほとんど知られていません。除雪を行う建設業界は人手不足、ましてや北アルプスという特殊な現場で泊まり込み。それでもひたむきに働く雲上の除雪隊。作業が終われば人知れず静かに下山します。その姿を通して改めて感じたのは、表からは見えない“誰かの仕事”がこの世の中を支えているという事実でした。雲上の現場ではいまだに“憧れというよりも意地”“やってやる”という気概で働く男たちがいます。誰に褒められなくとも自分が納得できるものをつくりたいと、雪の壁を美しく仕上げていく職人魂があります。時代とともに変わっていくものと変わらないもの・・・悠久の大自然の中で働く除雪隊の姿を通して、自分の信念とは何なのか、視聴者が思いを巡らせるきっかけになればと本番組を制作しました」
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。