『グッドラック やまとのうた』

2025.07.18更新

報道・情報

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:北海道文化放送)

声は出せなないけど家族で歌うと…

『グッドラック やまとのうた』

<7月25日(金) 26時45分~27時45分>

生きること、育つこと ある家族の記録

札幌に住む小山内大和くん(5)と両親は、よく“お出かけ”をする。大和くんは1歳まで生きられる確率10%とも言われる難病の18トリソミーで、医療的なケアが欠かせない。それでも両親は、わが子にさまざまな体験をしてほしいと願い、時に酸素ボンベを持って東京にまで出かける。全国に医療的ケア児は約2万人。“親の苦悩”が注目されるなか、子どもの成長を喜び、日々を慈しむ家族の1年を静かに見つめた。

“1歳を迎えられるのは1割”とも・・・重い障がいがある大和くんと家族 「なんでもチャレンジ」成長の日々

「息子とスキー場に行きたいんです」
小山内淳子さん(48)が“宣言”したのは、札幌に雪が降り始める2024年10月のこと。北海道民にとって特別なことではないスキー。でも小山内さん一家にとっては大きな挑戦だ。
淳子さんと夫の大地さん(41)、大和くん(5)の3人家族。大和くんは長年の不妊治療の末に授かった待望の子。生後、遺伝性疾患の18トリソミーと分かった。ダウン症と同じ遺伝性の疾患だが、平均寿命は大きく異なり、ダウン症が60歳前後とされているのに対し、18トリソミーは数時間から数年とされる。

小山内大和くん(5歳)

大和くんは呼吸器をつけるために気管切開をし、声を出すことはできない。それでも大きな目はとても「雄弁」だ。お母さんが料理をしているときは「ワクワク」、同年代の子どもたちが近づいてきたときは「ちょっとドキドキ」。走ったりするわけではないけれど、確かにしっかり成長している。
一家は体調に細心の注意を払いながら、家の外へ出て社会とつながることを大切にしている。夏の日帰りキャンプや冬のスキー。ちょっとの冒険が、成長させてくれるはず。そして地域の人たちにも、障がいがある子が近くで生きていることを知ってほしいと願っている。

父・大地さんと母・淳子さんは地域との交流を大切にする

小学校入学を前に学校を見学する

酸素ボンベを持って東京にも行った。医療的ケア児と家族の会の集会に参加したのだ。大きなバギーで都内の複雑な乗り換えはできるのか、移動中の体調は大丈夫か…不安ばかりだった冒険も、子どもと家族を成長させてくれる。
大和くんは2026年4月に小学校に入学する。両親は通常学級への入学を検討している。国も2021年に医療的ケア児支援法を施行し、それまで特別支援学校で学ぶケースが多かった医療的ケア児が、通常学級で学ぶことを後押ししている。地域の子どもたちと一緒に学ぶことは、大和くんの将来に大きな意味があると考えているからだ。一方で学校施設のバリアフリー化は道半ば。特別支援学校も訪問しながら、選択していきたいと考えている。
ある夜、小山内家にお父さんの歌声が響く。童謡、アニメの主題歌・・・大和くんの表情を見ながら何度も。その時、大和くんが一緒に歌い始めた。初めて見せてくれた姿。両親への大きなプレゼントだった。予期せぬことだらけの人生だけれど、自分たちはきっと大丈夫。お互いの幸運を祈りながら生きる3人の1年の記録。

ディレクター・井坂桃花(北海道文化放送 報道情報部)

「大和くんを見ていると“強さ”ってなんだろうと考えさせられます。人は生まれる場所も顔も体も選ぶことはできません。できることもできないこともさまざまです。それでも一度きりの人生。そんな自分をまるごと受け止めて、前に進むしかありません。大和くんには生まれた瞬間からたくさんのハンディがあります。誰かの手助けがないと生きることができません。それでもそんな自分のありのままを受け入れ確かに確かに生きています。毒親、親ガチャ。いろんな言葉を使って、自分の何かを誰かのせいにしたい今の時代。置かれた場所で精一杯に生きる大和くんの姿はまぶしく見えました。番組化にあたっては、大和くんと同年代の泉谷(星奈)さんにナレーションで力を貸してもらいました。これはほかの誰でもない大和くんの物語。親の心情にスポットが当たりがちな医療的ケア児ですが、今回ばかりは大和くんの成長をまっすぐ見つめてもらえればうれしいです」

【番組概要】

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『グッドラック やまとのうた』(制作:北海道文化放送)
≪放送日時≫
7月25日(金) 26時45分~27時45分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
プロデューサー・構成:涌井寛之(北海道文化放送)
ディレクター:井坂桃花(北海道文化放送)、小出昌範
ナレーション:泉谷星奈(テアトルアカデミー)
撮影:青木和宏(オーテック)
編集:宮本雄太(オーテック)
音効・MA:梅原浩介(パイルアップサウンズ)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。